陸自の「島嶼防衛」演習

 陸上自衛隊の毎年恒例のイベント「富士総合火力演習」(以下、総火演)が8月24日、静岡県御殿場市の東富士演習場で実施された。

 招待客と、応募総数13万3353通の中から抽選で当たった人を合わせた2万9000人が来場した。ちなみに今年の抽選倍率は24倍だった。

 私は2年ぶりに総火演に参加した。いつもなら総火演が始まる午前10時の時点でも空席が見られたが、今年はスタンド席、シート席ともに満席状態で、シート席の通路にも人が溢(あふ)れる状態であった。早い人は前日の夜から会場入口にテントを張り、並んだ人もいたようだ。

 総火演に何回か参加された人はご存じだと思うが、前段演習では陸自の主要装備品の紹介。後段演習では実際に「状況下を想定」した模擬演習が実施される。

 特に今年は、中国による尖閣諸島への侵攻を想定し、「島嶼(とうしょ)防衛」をテーマにした模擬演習が披露された。

 今年初めて参加した私の知人などは、10式戦車が時速約70㌔の速度で走行しながら射撃をする「スラローム射撃」を目の前で見て、「戦車のイメージが変わった」と興奮しながら話していた。

 10式戦車以外にも、陸自の主要装備品の凄(すご)さを十二分に堪能できるのが総火演の見どころだといえるだろう。

 一部のマスコミは、今年も総火演(約2時間)で使用された実弾と燃料代を合わせた金額が約4億円ということで、「税金の無駄遣い」と批判したが、陸自の日ごろの訓練の成果を年に一度、国民に披露しているわけであり、けっして高い金額ではない。

 逆に尖閣諸島への侵攻をもくろむ中国に対する抑止効果のほうが大きいと思う。

 最近は、中国の公船が尖閣諸島沖の接続水域や領海に侵入しても、新聞の記事も小さく、テレビではほとんど報道しなくなった。

 しかし連日、中国の公船が侵入を繰り返している。このことを日本人一人ひとりは認識しておかなければならない。

(濱口和久)