猿まねで猿駆除


地球だより

 日本の田舎に行くと、鹿や猪(いのしし)に畑が荒らされる光景を目の当たりにするが、インドでは近年、野生猿の被害がひどくなっている。

 業を煮やしたインドの首都ニューデリー市は8月から、国会議事堂など主要建築物から猿を追い払うための特別部隊を稼働させた。

 猿は、ヒンズー教では神の使者であり、崇拝の対象だ。だが最近、庭を荒らしたり人を襲って食料を奪ったりする都市型猿の出現で、ニューデリーなどの大都市では駆除を求める声が高まっていた。

 なお猿駆除特別部隊の兵器は、ライフルでも催眠薬を仕込んだ吹き矢でもない。ましてや消防自動車のような放水による猿駆除を行うわけでもない。

 ニューデリー市が出した特別部隊の秘策は、隊員たちを猿に変装させることだった。

 隊員たちは、猿のお面などを着けて変装し、40人ばかりの「力があって有能な若頭型猿」と化す。

 特殊部隊は、専ら木の陰に隠れて猿の攻撃をかわしつつ、機を見計らって叫び声を上げさらに動きをまねて脅し、街中をうろつく徘徊(はいかい)猿を追っ払うのだ。

 タイではバンコクの北160㌔の町ロッブリが猿の町として有名だ。ここではクメール遺跡と猿の町として有名で、訪れる観光客は後を絶たないのだが、生活者には困り者の猿でしかない。一番困るのは買い物をした食料の略奪であり、屋根に上った猿にテレビ・アンテナを揺さぶられたり、壊されたりすることだ。このためアンテナというアンテナには鍋のふたのようなネズミ返しならぬ、猿返しがずらりと並ぶ。