保存食にもなるクリスマスケーキ ーブラジルから
地球だより
南半球のブラジルは、真夏の太陽の下でクリスマスシーズン真っ只中(ただなか)だ。ショッピングセンターや商店街は、プレゼントを買い求める人々であふれており、マスク姿さえなければ新型コロナウイルスの流行を忘れてしまいそうなほどのにぎわいを見せている。
ブラジルのクリスマスに欠かせないものといえば、クリスマスツリーに家族や友人へのプレゼント、そしてブラジル版のクリスマスケーキ「パネトーネ」だ。
パネトーネは、イタリア・ミラノ発祥のお菓子で、発酵させたスポンジ生地にドライフルーツの砂糖漬けやチョコレートチップを混ぜたものがブラジルでは主流となっている。
クリスマスイブにパネトーネを食べるのがブラジルの習慣となっており、12月に入ると、家族や友人たちに配るために大量に買い込む人々の姿が各所で見られる。
パネトーネで驚くのは、保存期間が1カ月から半年と長いことだ。その理由は「パネトーネ種」という独特の酵母にある。保存料などを使用しなくても、乳酸菌が微生物やカビの発生を抑え、おいしさを保ったままの状態で長期保存を可能にするのだという。
日本に住む知人にパネトーネを紹介したところ、非常に好評だった。その知人から「再度購入した」との連絡があったのだが、その理由に納得した。
災害対策用の保存食として購入したというのだ。長期保存が利く上、炊事用の水も必要ない。災害時の心と体を癒やす「甘み」としても悪くないと説明された。自然災害の多い日本では、クリスマスシーズンだけでなく保存食としても注目されるお菓子になる可能性を秘めていそうだ。(S)