車を長く乗り続けるという「エコの形」ーブラジルから


地球だより

クラシックカー

 ブラジルで驚くことの一つに、中古車市場の活気がある。中古車に人気が集まる理由は幾つかあるが、その一つは新車価格が非常に高いことだ。

 ブラジルは工業製品にかかる税金が高く、スマホから自動車まで、あらゆるものが日本に比べて高価なのだ。最新のアイフォーンが20万円以上といえば、その凄(すさ)まじさが分かるだろう。

 もちろん、中古車も高い。日本では値が付かないような年式・走行距離のクルマであっても、信じ難い値段で取引されている。

 それだけに、中古車を大切に長く乗る文化が根付いている。街中には、至る所に自動車の修理工場があり、足回りや電装系、ドアなどそれぞれのパーツに特化した修理店も多い。

 先日のことだ。走行中に道路の陥没部に落ちてしまい、マフラーがぽっきりと折れてしまった。

 幸い、近くにマフラー専門の修理工場があったので、クルマを持ち込むと、その場で特殊な溶接装置を使って直してしまった。部品の発注などで数日はクルマを使えなくなるだろうと思っていただけに嬉(うれ)しい誤算だった。

 ちなみに、ブラジルでは新車時から年を経るごとにクルマにかかる税金は安くなっていく。購入時から20年たてば、その後は「無税」だ。大事に乗り続ければ、財布にもエコな仕組みである。

 世界では温暖化防止に向けて自動車の「EV(電気自動車)化」などエコが叫ばれており、化石燃料は悪者になりつつある。ただ、新たな自動車や製品を次々と生み出すために必要なエネルギーや資源を考える時、ブラジルのような「エコの形」も続いてよいのではないかと考える。(S)