成長の柱は観光、エネルギー

21世紀の北海道

前道議会議員 柿木克弘氏に聞く

 近年、北海道を訪れる外国人が増えている。四季を通じて豊かな自然があること、さらに新鮮な食材に魅力を感じる、などがその理由に挙げられる。そうした北海道の魅力をさらに引き出し、住み良さの面で“満足度”の高い北海道をつくろうと東奔西走しているのが前道議会議員の柿木克弘氏。昨年7月の参議院選挙では自民党公認候補として出馬し惜しくも敗れたが、21世紀の北海道を「地方の時代」のモデルとする夢は捨てていない。同氏が描く新しい北海道ビジョンについて聞いた。(聞き手=湯朝肇・札幌支局長)

北大と民間でロケット研究開発
農産物輸出に力を注げ

昨年7月の参議院選挙では自民党公認候補として出馬したものの、残念ながら落選しました。それから1年ほどたちますが、振り返ってみて今、どのような思いを持っていますか。

柿木克弘氏

 かきき・かつひろ 昭和43年1月、美唄市生まれ。49歳。札幌大学経営学部卒業。平成7年、美唄市議会議員。11年道議会議員に当選後、5期務める。その間、自民党道連青年局長、政調会長、幹事長の要職に就任。現在は、自民党北海道第10区筆頭副支部長、美唄市体育協会会長、聖山会藤野聖山園代表理事などを務める。

 選挙で負けたことは私の不徳の致すところで、私を支持・応援して下さった皆さんには本当に申し訳ないと思っています。選挙の結果については一日も忘れていません。この1年間は、私が政治の世界で歩んできた道のりを見詰め直してきました。選挙後は、応援して下さった方々に感謝の意を込めて3カ月くらいかけて全道をあいさつ回りし、その後は地域や団体の行事に参加するなど、出来る限り道民の皆さんに接することを心掛け、情報交換をするようにしています。その一方で、道議会議員の時代に比べてかなり沢山の本を読むようになりました。時間的な余裕ができましたので、北海道をテーマにしたもの以外に国の政策に絡んだ書物を片っ端から読んでいるという状況です。

政治に対する見詰め方・捉え方に変化はありますか。

 この1年間、政治の世界を客観的に見ることができたと思います。政治を志す一人の国民として国会、安倍政権の動きを見ています。

安倍政権に対して、何か思うところはありますか。

 現在の選挙制度は二大政党をつくり、そこで議論を戦わせる仕組みをつくろうとしていたと思います。保守とリベラルが切磋琢磨(せっさたくま)し、政権交代しても国民生活が安心して政治を任せることのできる態勢になることを国民は期待していると思います。ところが二大政党の一つと思われた民進党は支持率はおろか、政策らしきものが見えてこない。一方の自民党といえば、少し強引さが見えるような気がします。例えば、加計学園の問題にしても、相手の私生活を追及するのではなく、正々堂々と対応すればよかったのではないか。あるいは憲法改正論議にしても、まずは地方創生にもっと目を配りながら国民に納得してもらった上で行うべきではないかと考えています。

地方創生という点から言えば、北海道はJR北海道の鉄道路線の廃止あるいは人口減少など問題が山積していますね。

 JR北海道の鉄道路線の廃止は地方自治体にとっては深刻な問題であることは確かです。住民の移動手段がなくなれば生活スタイルが変わりますし、下手をすれば自治体の人口減につながりかねません。その一方でJR北海道は10路線13区画については、「単独での維持は不可能」と沿線自治体に理解と協力、支援を求めていますが、やはりここは知事が乗り出して調整すべきだと思います。存続すれば明らかに赤字が膨らんでいくところはバス転換もやむを得ないのではないでしょうか。檜山管内などはバス転換してうまくいっているといいますし、そうしたところを参考にするのもいい。バスを小まめにうまく活用すれば行き届いたサービスができるのではないでしょうか。お年寄りが駅まで行って列車に乗る時代ではないのかもしれません。さらに言えば、人と貨物を一緒に乗せるとか観光列車にするなど、これまでと違った利用があると思います。そういう意味ではJR北海道と地方自治体が話し合うことは意義があると思います。

人口減少についてはどう考えていますか。

 昔から東京一極集中の弊害が指摘されてきました。北海道で言えば札幌一極集中。ある意味で東京や札幌は人口のブラックホールとなっており危険な状態です。その一方で、いっこうに地方分散が進まない。異常気象による大災害が頻繁に起こり、さらに南海トラフなど大地震の予測がなされている昨今でも、かつての首都機能の移転論議は今ではほとんどありません。今からでも首都機能の移転・分散について対策を練る必要があると考えています。一方、地方には都会にはない大きな魅力があります。自然が豊かで満足度の高い“人間らしい生活”ができる空間があります。地方の人がまず、地元の魅力を知り、都会とのネットワークを駆使して連携を図り、地方の魅力を都会に発信する必要があります。さらに、地方は若者が地域に定着する仕組みや基盤を早急につくり上げていかなければならないと考えています。加えて、人手不足は今後、女性の社会進出、定年制の延長、AI(人工知能)の利活用などでかなり補えるのではないでしょうか。幸い、地方も働く場所が増えてきました。地方で暮らす方が預貯金が増え、趣味や娯楽が広がり、家族サービスも増えるなど家族、仕事、そして自らの人生生活を充実したものにすることは十分に可能だと考えています。

政府はこのほど、未来投資戦略2017の素案を発表しましたが、北海道の成長戦略をどのように捉えていますか。

 北海道の成長戦略の柱は、やはり観光とエネルギーと農水産業になると思います。とりわけ農業は世界に目を向け農産物の輸出に力を注ぐべきです。観光は外国人観光客が伸び続けていますが、観光客の受け入れ態勢をしっかりつくること。とくに札幌近郊だけでなく道東や道北などの観光ルートの早急な整備が重要です。エネルギーについて言えば、北海道は自然エネルギーの宝庫と言えます。太陽光や地熱、風力などの自然エネルギーに対してもっと重点的に取り組んでいっていいと思います。さらにもう一つ成長戦略になると考えられるのが宇宙産業です。

 現在、北海道大学と民間企業、自治体が連携してロケットの研究開発を進めていますが、これも成長産業の一つの“芽”といっていいのではないでしょうか。