みずほ障害、無責任体質を全面刷新せよ
みずほ銀行とみずほ信託銀行でシステム障害が生じ、全国の店舗窓口で一時、振り込みや入出金ができない状態に陥った。
このような障害は今年に入って5回目だ。顧客の信頼回復は遠のくばかりである。
今年に入って5回目
持ち株会社のみずほフィナンシャルグループ(FG)によると、基幹システムと営業店の端末をつなぐシステムのハードウエアの機器に故障が生じた。19日午後9時ごろに障害を検知し復旧作業を進めたが、20日午前9時の店舗の営業開始時間には間に合わなかった。
現金自動預払機(ATM)やインターネットバンキングによる入出金、送金には問題がなかった。しかし特に高齢者は窓口を利用する人も多く、利便性を損なったことは確かだ。
みずほ銀では今年2月末から短期間に4回のシステム障害が発生。第三者委員会の調査報告書を踏まえ、6月に取りまとめた再発防止策を進めていた矢先の失態である。これでは顧客の不信感が高まるばかりだ。
今回のトラブルでは、システム機器の異常発生時に起動するバックアップが2系統とも機能しなかったという。みずほでは機器の総点検をしていたはずだが、チェックが甘かったと指摘せざるを得ない。
これまでのシステム障害では、スピード感に欠ける対応が問題となった。今回も、みずほFGの坂井辰史社長やみずほ銀の藤原弘治頭取に連絡が入ったのは発生の1時間後だ。電子メールによる連絡だったため、藤原氏が確認したのはさらに1時間後だった。ホームページでトラブルを顧客に周知したのも、営業開始の30分前だった。
2月のATM障害の際には、経営陣はネットニュースで情報を把握した。こうした問題を本当に改善しようとしているのだろうか。
みずほFGは、日本興業、富士、第一勧業の大手3行が経営統合して誕生した。だが出身銀行による人材配置が主導権争いを生んだため、子会社に共通する部門ごとに統括幹部を配置する制度を導入した。システム障害が繰り返される背景には、組織が複雑化して責任の所在が曖昧になったことがある。
第三者委の報告書は、みずほで繰り返されてきた大規模障害の根底に「経営陣以下のシステムリスクに対する感度の低さがある」と明記。顧客への対応についても「有事の対応で顧客利益に配慮する姿勢が足りなかった」と断じた。
また、組織の危機対応力、ITシステム統制力、顧客目線のいずれでも弱さがあると指摘。「積極的に声を上げることで、かえって責任問題となる」という「体質や企業風土」が影響していると分析した。こうした体質を全面的に刷新しなければ、顧客の信頼回復は難しい。
金融庁の責任も問われる
金融庁は、繰り返されるトラブルに厳正に対処する方針だ。ただ、みずほが2002年と11年に大規模なシステム障害を起こした際にも業務改善命令を出したが、またしてもトラブルが発生した。
監督官庁である金融庁の責任も問われる。