GDPプラス 感染爆発抑え低成長脱せよ


 2021年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、実質で前期比0・3%増、年率では1・3%増とプラス成長だった。4月に新型コロナウイルス対策で3度目の緊急事態宣言が発令されたにもかかわらず、思いのほか高い伸びとなった。

 これにはマイナス成長だった前期の反動もある。7~9月期は4度目の宣言発令下にあり、予断を許さない。何よりデルタ株による感染爆発をいかに抑制するかが、今後の経済正常化のカギである。

国内需要や輸入が伸びる

 4~6月期が思いのほか悪くないとみられるのは、3度目の宣言下にもかかわらず、個人消費や設備投資など国内需要が伸びて、輸入が前期比5・1%増と高く伸びたことである。

 GDPの半分以上を占める個人消費は0・8%増と、前期の1・0%減からプラスに転換。設備投資も半導体製造装置やデジタル対応関連などが伸びて、1・7%増とプラス成長を下支えした。

 輸入の高い伸びはこうした内需の伸びの反映であり、回復した海外経済の例のように、日本経済もワクチン接種の進展により、景気の持ち直しの過程にあると言える。輸出の伸び(2・9%増)以上に輸入が伸びたため、GDPの計算上、数値を悪くするが、実態はそう悪くはないということである。

 もちろん消費のプラス転換には前期の反動という面があり、輸入の伸びにも原油など資源価格の上昇という要因もある。だが、通信機器や半導体などの輸入が増えていることは設備投資の一定の強さを示すものであって心強い。

 実質GDP実額をみると、4~6月期は年率換算で538兆円と、コロナ禍が直撃した20年4~6月期の500兆円から回復傾向にあるものの、コロナ前の19年10~12月期(546兆円)の水準には依然として届いていない。

 政府はGDPを年内にコロナ前の水準に回復させることを目指している。西村康稔経済財政担当相は「現時点で政府見通しは変えない」と述べ、実現可能との認識を示した。

 7~9月期以降も、4~6月期と同様の状況が続くのであれば実現可能となろうが、状況は予断を許さない。現下のコロナ感染の爆発的拡大である。

 感染爆発の抑制へ、政府は宣言対象地域の拡大と延長を決めた。自粛営業が緩和された百貨店では、食料品売り場などの入場制限も始まっている。

 思いのほか高い成長とはいえ、前期比0・3%増、年率1・3%増の低成長は相変わらずである。4度目の宣言が発令中で、8月後半からは対象地域の拡大、延長となるため、消費の低迷は不可避の情勢である。

ワクチン接種の加速を

 回復過程にある経済を着実に軌道に乗せるには、何より現下の感染爆発を食い止めねばならない。マスク、消毒、手洗いなど基本的な感染対策はもちろんだが、知恵の限りを尽くしてワクチン接種を加速させる。遅きに失した感もあるが、都知事が示した若者への予約不要のワクチン接種なども積極的に進めてもらいたい。