緊急事態拡大 資源総動員し医療崩壊防げ
持てる医療資源を最大限活用し、医療崩壊を防がねばならない。新型コロナウイルス感染症対策として東京都など6都府県に発令中の緊急事態宣言が、きょうから京都、兵庫、福岡など7府県に拡大される。期限は9月12日まで。6都府県も同日まで延長される。
自宅で死亡するケースも
菅義偉首相は、デルタ株の猛威でこれまでにない感染拡大が続いているとし、「重症者数も急激に増加し、首都圏を中心に医療体制は非常に厳しい」と危機感を示した。今後は「医療体制の構築」「感染防止の徹底」「ワクチン接種」を3本の柱として対策を進めていくと表明。最初に医療体制の構築を挙げているのは、医療崩壊を防ぐことに最も力を注がなければならないとの姿勢の表れだ。
全国の新規感染者数は19日、2万5000人を超え、重症者は1765人と7日連続で最多を更新した。政府は百貨店など1000平方㍍を超える大型商業施設での人数制限を要請し、「混雑した場所への外出機会の半減」を呼び掛けている。従来株の2倍の感染力を持つとされるデルタ株の蔓延(まんえん)を防ぐには、これまで以上に対策の徹底が求められる。ただ、どれだけの効果が期待できるが不透明だ。
感染が抑えられたとしても、重症者の数は後追いで増えてくる。救急搬送を断られるケースも出ており、命の危険が差し迫った重症者の受け入れ態勢の強化が急務だ。軽症・中等症で自宅療養の人が急増し、症状の急変で亡くなるケースも増えている。ホテルなど宿泊施設の拡充を急ぎ、重症化を防ぐ抗体カクテル療法を少しでも多くの患者が受けられるようにすべきだ。
病院以外で酸素吸入を受けられる酸素ステーションを設置している自治体もある。容態の安定だけでなく、不安解消のためにも効果が大きい。感染拡大が激しい自治体では設置を急いでほしい。
医療従事者の不足などが足枷(あしかせ)となっているが、日本は施設や人材が乏しいわけではない。持てる医療資源を総動員して感染者の治療、ケアに当たれるよう、政府、自治体、医師会が連携を強化する必要がある。「災害レベル」とまで言われる感染状況にあっては、何より政府の強い指導力が求められる。
ワクチンについて菅首相は、8月末には全国民の半数近く、9月末には6割近くが2回の接種を終える見通しと説明。その上で「10月から11月のできるだけ早い時期に、希望する全ての方の接種完了を目指す」と述べたが、接種に疑問を持つ若い世代にも働き掛けなければ出口も見えてこない。
速やかな都市封鎖検討を
緊急事態宣言を発令しても、基本的には国民へのお願いベースであることから、ロックダウン(都市封鎖)の検討を求める声も専門家や全国知事会などから出ている。医療機関へのより強い命令ができるよう法改正を求める声もある。
個人の行動制限など私権制限につながることから、政府は慎重姿勢だが、欧米では普通に行われている。政府はこの問題から逃げるべきでない。速やかに検討に着手すべきである。