GDP減戦後最悪、積極的にワクチン接種進めよ


 2021年1~3月期の国内総生産(GDP)速報値は、実質で前期比1・3%減、年率換算では5・1%減となった。この結果、20年度は前年度比4・6%減と2年連続のマイナス成長になり、下落幅は戦後最悪となった。

 新型コロナウイルスの感染収束の見通しが立たない中では、効果的な経済対策も実施できない。大規模会場での予約も始まったワクチン接種を増やすしかない。試行錯誤を恐れず大胆に進めていってほしい。

 新型コロナ対策の影響

 20年度のGDPがリーマン・ショック時の08年度(3・6%減)を超え、統計上さかのぼれる1956年度以降で最大の下落率となり、事実上、戦後最悪の落ち込みとなったのは、二重の意味でショッキングである。経済データの計算上の結果としてだけでなく、感染対策上、緊急事態宣言などでやむなく取られた政策の結果であるからだ。

 政府や自治体の要請という形で人の移動の自粛や、飲食店、百貨店、レジャー施設などの営業停止・時短営業などが実施され、出入国でも厳しい制限が課された。その制限、制約の影響の大きさは、経済的な負担だけでも個人、家計、企業、国・自治体それぞれに重くのしかかった。収入の減少、失業、コロナ倒産の増加、財政負担などの著増などである。

 コロナ禍は、GDP項目では特にその半分以上を占め、内需の柱である個人消費を直撃。1~3月期も前期比1・4%減と振るわず、コロナ収束の不透明さから設備投資も1・4%減と低調だった。

 コロナ禍の厄介(やっかい)さは、感染状況との絡みで景気刺激策の実施が難しいことである。政府の需要喚起策「Go To」キャンペーンはそれなりに効果を挙げたが、感染拡大を招くとして停止を余儀なくされ、現在も中断したままである。

 西村康稔経済財政担当相は「内外の感染状況を注視し、予備費活用を含め機動的に必要な対策を講じる」と述べ、景気の下支えに全力を挙げる姿勢を示した。だが、あくまでも下支えであり、しかも既に飲食・宿泊業界からは限界との声も聞かれ、コロナ倒産の大型化も懸念される状況である。

 上場企業決算では「巣ごもり」需要や「テレワーク」需要を取り込んだ企業、さらには海外景気の回復に乗った製造業で明るさも出てきているが、航空、鉄道、百貨店など非製造業では大幅な赤字に転落するなど二極化の様相を強めている。

時間浪費せず負担軽減を

 移動の自粛や営業の時短・停止は経済的にも負担があまりに大きい。だが、感染対策には必要でやむを得ない――。こうした状況を打破するには、既に景気回復の勢いが加速する米国のように、ワクチン接種を大胆に進めるしかない。

 日本の出遅れは明らかだが、大規模会場での予約も始まった。システムの不備も見つかったが、逐次改修を重ねていけばいい。予約の公平さにとらわれ過ぎて時間を浪費したくない。感染そのものの抑制と同時に、前述したさまざまな負担の軽減へ接種を積極的に進めたい。