小中高生が意見交わし「いじめ」のない学校を考える
北海道砂川市で「どさんこ☆子ども全道サミット」開催
全国的に深刻な問題となっている「いじめ」について、文部科学省は根絶のための施策を講じているが一向に減る気配がない。そうした中で北海道では毎年「どさんこ☆子ども全道サミット」を開催している。今年度も全道各管内から集まった小学校、中学校、高等学校の児童生徒代表が集まり、各学校の取り組みや、いじめへの対策などを話し合い、その成果を学校に持ち帰った。(札幌支局・湯朝 肇)
学校に持ち帰り成果を共有、学校づくりに主体的に参画
「僕たちの班では、グループテーマを『自らthink 皆でshare』としました。それは、一人ひとりが主体的にまず考え行動し、そして皆で辛(つら)さや喜びを分かち合うことでいじめのない学校・地域づくりを目標にしたいという思いが込められています」――こう語るのは、釧路管内の北海道釧路明輝高校2年の柴田聖也君。
8月8日と9日の2日間、空知管内砂川市内にあるネイパル砂川(道立青少年体験活動支援施設)で「2019年度どさんこ☆子ども全道サミット」(主催・北海道教育委員会、以下道教委)が開かれた。参加した全道の小学生、中学生、高校生計49人は八つのグループに分かれ、全道的なレベルでより良い学校生活や地域での人間関係を構築する際に、子供たちが主体的に取り組むためのオール北海道としての「共通テーマづくり」に取り組んだ。
同サミットで具体的な協議を行うワークショップのテーマは三つ。文科省の掲げる学習指導要領の柱「主体的・対話的で深い学び」に則した①「世界の中で輝き続ける北海道」を目指し、いじめのない明るい学校や地域をつくる「未来志向」であること②互いの良さや価値を見出(いだ)し、自らの能力を十分に発揮しながら満足して暮らせる「価値創造」に富んでいること③オール北海道として「道民一体」感を持ったコミュニケーション活動が広がるものであること――を念頭にテーマづくりの話し合いが進められた。
一つのグループは6、7人から成り、小学生、中学生、高校生で構成。皆初対面で最初はぎこちなかったものの、自己紹介や各学校の取り組みを紹介する中で徐々に打ち解け合い議論も活発になっていった。2日間のワークショップの中で、それぞれのグループが作り提案した「共通テーマ」は、「互いに認め合う環境づくりをしよう」「意識・協力・コミュケーションを大切に!!」「自ら動く」「人を笑顔にするために 僕は勇気を出してみよう!」などさまざま。
サミットでは、八つのグループが作り上げた「テーマ」を持ち寄ってさらに論議を重ね、今年度のオール北海道としての共通テーマを「一人一人の良さを生かすために、他者との関わり合いを大切にしよう!」に決定した。
「どさんこ☆子ども全道サミット」は、全国に先駆けて平成22年度に開催され、今年で10回目。平成29年度まではテレビ回線を使った会議形式で、小中高生が一堂に会してワークショップを持ったのは昨年度に続いて今回が2回目となる。サミットではワークショップに入る前に、冬季オリンピックに参加したスピードスケート選手の神谷衣理那氏と鈴木靖氏を招いてのトークセッションを持つなどチームワークやリーダーとしての在り方を提示。また、子供たちは、ワークショップを行う際には予(あらかじ)め「思考を整理するマインドマップ」「マインドマップを使った持ち回りの発表(ラウンドロビン)」など議論するための技法を学んだ。
同サミットの効果として北海道教育庁学校教育局生徒指導・学校安全課の尾形友秀主幹は「初めて会う子供たちが一堂に会し、寝食を共にして実際にいじめのない学校や、より良い学校づくりを話し合うことは良い経験になると思います。今後、彼らが地元に帰り、地区会議でリーダー的な存在として活動していくことになります」と語る。このサミットがいじめ根絶のための対策と同時に、地域のリーダー育成の役割を担っているというのである。
北海道立羽幌高校2年の長谷川冬実さんは同校の生徒会書記に就いているが、今回参加して「各学校でいじめに対していろいろな活動に取り組んでいると知りました。また、全道に友達ができたことも良かった。この体験を地域で生かしたい」と感想を語った。
同サミットのメリットは単なる教育施策としてのいじめ対策というよりも、子供たちが主体的に取り組み学校づくりに参画しているところが価値視される。道教委としては今後も、一堂に会してワークショップを行う方式を続ける方針だ。