「征韓論」より「制韓論」を
過去にも、日本と韓国の関係が「危機的状況だ」と評されるような険悪な状態を招いたことが何度かある。しかし、今回は、立て続けに日本を刺激する言動を韓国が採ったこともあって、各種雑誌や新聞テレビにも、刺激的な激しい意見が登場してきた。
昨年10月には大法院がいわゆる徴用工問題で新日鉄住金に賠償を命ずる判決を出したかと思えば、11月には日韓慰安婦合意に基づく財団が一方的に解散させられてしまい、やっとたどり着いた「未来志向の不可逆的合意」がまたしても踏みにじられた。さらに12月には韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊の哨戒機にレーダー照射するといった戦闘開始と、一般には解釈される異常事態を起こしておきながら、非を認めるどころか、世界の常識に反する言い訳を憶することなく言い放ち、逆に日本を非難し恫喝(どうかつ)してきたのだ。極め付きは、今年2月7日、文(ムン)喜相(ヒサン)国会議長が「天皇は戦争犯罪の主犯の息子ではないか」と公言し、陛下に謝罪を要求したことだ。
多くの日本人は、韓国からの度重なる「理不尽な仕打ち」と「身勝手な言い掛かり」に苛立ちながらも、「日本人としては品位・品格を落としたくない」と自粛に努めてきた。
しかし、多くのメディアを通して伝わってくることは、文(ムン)在寅(ジェイン)政権が、反日機運を鎮めるどころか、逆に国内世論を結集するために「反日、嫌日」を扇動しているという。どれほど寛容な日本人といえども、今や、韓国に対する不満、怒りは、頂点に達していると言ってもよかろう。
不幸にして日本世論には、潜在的に反韓、嫌韓ムードが存在している。口汚く韓国人の素性をののしり、「身勝手な人間で信用などできない」と断定する「ヘイトスピーチ」が、一部の評論家によってなされ、多くの者が留飲を下げていることも否定できない。
この状態が改善されなければ、「ヘイトスピーチ」が市民権を持ってしまい、「反韓」「嫌韓」感情は燃え盛り、「報復制裁すべし!」「断交もやむをえない」といった激しい無責任な言葉を口にする強権派が増えてくることを懸念せざるを得ない。
こうした状況にあっても、日本政府は、「遺憾に思う」「韓国側に厳重に抗議した」を繰り返す一方、日本人には「自粛」を求めるだけである。
それ故、国民は自国の政府に向かって「腰抜け外交!」とか「現実から逃避だ」と、不満、憤りを増幅しているのだ。
「歴史問題」を「有効な切り札」として迫ってくる韓国の姿勢に、日本人の多くは、やり場のない怒り、さらに進んで“虚無感”をすら感じているのだ。この心情は、韓国の主張に正当性を認めたからではない。正当な主張に屈服したからでもない。唯一、「韓国の宣伝力」に振り回わされているからにすぎないのだ。
慰安婦問題が典型であろう。彼等はあらゆるところに働き掛けて「自分たちの正当性」を主張しまくり、今現在も、執拗(しつよう)に実施している。一方、日本は、国際社会に対して「過去の行為について上手に説明した」とは言い難い。日本は韓国のプロパガンダに負けており、「外交力」が不足しているのだ。
「武力を国際紛争解決の手段としない」と誓ったわが国は、世界を巻き込んで解決するほかはない。韓国は日本の主義主張を無視するに決まっている。それならば徴用工問題や、慰安婦問題に限らず、韓国が日本を苦しめている諸問題を、直(じか)に2国間で対決することをやめて、議論の経過を欧米メディアに逐一報告したらよいのだ。日本に有利な判定が得られるのを求めるのではない。わが国の主張を客観化するために、積極的に第三者に明確に表明した方がよいのだ。「韓国が応じないから」と自ら提訴を自粛しているが、出頭させるか否かは国際司法裁判所(ICJ)の権限だし、努力であるはずだ。
韓国を日本の意の中に征圧する「征韓論」ではなく、韓国を世界の常識の中に制御する「制韓論」を国も民間も組み立てる必要があると言いたい。
(くぼた・のぶゆき)