中国、海上コンテナ・ミサイル開発

貨物船に搭載し偽装

ビル・ガーツ

ビル・ガーツ氏

 中国は、貨物船に搭載される海上コンテナから発射する新型の長距離巡航ミサイルを製造している。米国防当局者が明らかにした。これにより、中国が運用する貨物船が戦艦に転用され、国外の商業港がミサイル基地となる可能性が出てくる。

 このミサイルは対地攻撃用で、現在、発射テスト中。対艦ミサイルYJ18Cの派生型とみられている。ミサイルの発射台は、外見は世界中で使用されている通常サイズの海上コンテナと同じで、貨物船の甲板に搭載することも可能だ。

 発射台を輸送コンテナに偽装したロシアの巡航ミサイル「クラブK」を模倣したもので、イスラエルも「ロラ」と呼ばれるコンテナ発射ミサイルの開発を進めている。

 中国は、「一帯一路」の一環として、世界各地で商業港の買収や建設を進めており、これらの港にYJ18Cを乗せたコンテナ船が通常のコンテナを装って入港することも可能になる。

 中国は、米国に近いバハマ、パナマ、ジャマイカで、大型船が入港可能な大水深埠頭(ふとう)を持つ港を運用、建設している。

 フォーラー米南方軍司令官は、南米での中国の影響力拡大に警鐘を鳴らしている。とりわけ「パナマ運河に関連する重要インフラへの中国の支配」を警戒している。

 中国が運用するジャマイカの港は、パナマ運河を経由してくるコンテナ船の積み替え拠点となっている。パナマは2017年に台湾と断交し、中国との国交を樹立した。バレラ大統領は、一帯一路への支持を表明しており、中国企業が、コンテナ船のターミナル港となるパナマ・コロン・コンテナ港の建設を進めている。

 国際評価戦略センター上級研究員のリチャード・フィッシャー氏は、「コンテナ収納型ミサイルによって中国、ロシア、ならず者国家は、米国と同盟国を直接的、間接的に攻撃する新たな選択肢を手にすることになる」と警告した。

 フィッシャー氏は「輸送コンテナ発射台は、海路や陸路を経て密(ひそ)かに持ち込まれる可能性がある。米軍事基地の射程内に長期間、保管した上で、有事に使用するということもあり得る」と指摘した。紛争前に商業船に乗せて、米国沖や港湾内を航行させておくことも可能だ。

 フィッシャー氏はさらに、電磁パルス(EMP)弾頭を搭載したコンテナ・ミサイルを使用することで、「中国から核ミサイルを発射することなく、米軍の電子機器を無力化することもあり得る。米国はどこから攻撃を受けたのか分からず、混乱に陥り、中国はその機に乗じて、真の目的である台湾の武力制圧を開始するだろう」と予測する。

 中国のミサイルに関する著作のあるクリス・カールソン元海軍大佐によると、中国はエンジンの開発に大きな課題を抱え、YJ18Cの射程は1600㌔に満たないだろうと予測、海上コンテナに4発を搭載可能とみている。

 中国はパキスタンのアラビア海に面したグワダル港を建設、運用している。グワダルは、戦略的に重要な原油輸送ルートに近い。グワダル港の近くのジワニには軍事基地を建設中だ。

 また、スリランカ、ギリシャ、セーシェル、オーストラリアの港湾の建設、運用にも関わっており、今後、軍事目的にも利用される可能性がある。