海・空自衛隊に多くの宿題
香田洋二・元自衛艦隊司令官の話 現代の軍事作戦において航空戦力は必須。その選択肢の一つとしての、STOVL機の艦上運用という意味では評価できる。
ただ現段階では、現場の海・空自衛官の声が十分に反映されていないように思う。
例えば、空自のF35Aのパイロットがいずもでの任務にあたるというが、STOVL機(F35B)は艦上での運用が原則。パイロットの資格や養成形態も空と海では全く違う。
海兵のパイロットは、甲板上ですべてを行えるよう教育されている。それは、単に陸上基地が使えなくなった場合に船に降りればいい、といった生ぬるいものではない。
またF35Bは、いずもに発着艦することが目的ではなく任務で使用するため、空対空ミサイルや対艦攻撃ミサイルなどを新たにいずもに積まなければならないが、現在のいずもにはヘリコプターを運用するための設備しかない。
仮に陸上基地が5日間使えないとして、F35Bを10機運用する場合、出撃回数×5日×10機分の武器を積み、さらに整備工場も整えなければならないとなると、本当に可能なのか疑問に思う。
さらにF35Bは、短距離離陸・垂直着陸ができる代わりに、F35Aよりも航続距離や武器の搭載量などで性能が劣る。航空戦力を強くするなら、空自からすればF35Aをたくさん導入したほうが運用しやすい。日本にはF35Aを運用できる滑走路は少なくとも90本はある。空中給油機とそれをうまく使うという選択肢もある。
いずも改修は、アイデアはいいが、細かな対応までは大綱には明記されておらず、海・空自衛隊に多くの宿題を与える形となっている。