モンスターペアレント対策を考える
北海道師範塾「教師の道」が夏季講座
わが国の教育現場において「教師の資質」が問われている。その一方で、理不尽な要求を学校側に求める保護者“モンスターペアレント”の増加も指摘されている。いじめや不登校など難問が山積する中で、「教師こそ学び続けるもの」を合言葉に教師の道を追究し、さらに教師を目指す若者を対象に養成事業に取り組む北海道師範塾「教師の道」の夏季講座がこのほど、札幌で開かれた。(札幌支局・湯朝 肇)
重要な教師と保護者との信頼関係
「さ・し・す・せ・そ」が大切
「私が教師になりたての頃、学校は牧歌的で、教師は授業や部活動に専念できた。しかし、最近は保護者も学校に対して遠慮なくモノを言うようになり、ささいなことでもクレームをつける保護者がいる」―8月7、8日の2日間にわたり、札幌市内のホテルで開かれた北海道師範塾「教師の道」(吉田洋一塾頭)主催の夏季講座で講師の一人である藤女子中学・高等学校副校長の黒田信彦氏はこう語り、教育現場において教師と保護者との間で新たな信頼関係の構築の必要性を指摘する。
というのも、教育現場では“モンスターペアレント”といわれる自己中心的な保護者が増加傾向にあり、その対策に教師が追われるという実情がある。
黒田副校長は、「今でも大半の保護者は学級担任や校長と良好な関係にあります。モンスターペアレントはほんの一部なんです。ただ、そうしたモンスターペアレントによる騒動は時として学校全体の問題となり、他の生徒に迷惑を掛けてしまうケースが出てきているのです。そうした事態にならないために日頃から教師は保護者にきちんと対応できるようにしておく必要がある」と語る。
その上で同副校長は対策として「さ・し・す・せ・そ」を心掛けることを提案する。すなわち、「常に、(さ)最悪を想定して対処する。また、保護者に対するときは(し)慎重に接する。そして、何かあったら、(す)素早く対応。
その時は(せ)誠意を示すことが大事。さらに、一人で対応するのではなく、校長や他の教師などにも協力を求めて、(そ)組織で行うことが大事」というのである。
黒田副校長の講話の後は、参加者がそれぞれの班に分かれ、幾つかのモンスターペアレントの事例を演習テーマとして取り上げ、教師としてどのように対応すべきか話し合った。
ところで、北海道師範塾「教師の道」は毎年、夏季と冬季の2回講座を開催しているが、毎回、企業経営者を招いた講話を企画している。その理由として吉田塾頭は、「企業経営者のマネジメントと教師の学校・学級運営は相通じるものがある。教師も学校という閉じられた空間だけを見るのではなく、社会の営みを知る上で勉強になる」と話す。今回の夏季講座では、講師として資生堂ジャパン北海道支社の藤原志保子支社長を招いた。 「そのとき、何を考え、何をするのか~笑顔のマネジメント体験」をテーマに講演した。岩手県大槌町出身の藤原支社長は高卒後、地元の資生堂盛岡駐在所に美容部員として入社。以後、社員・お取引様教育担当、営業担当、営業部長を任されることになる。
さらに、東日本大震災を体験した後、山形支店長、そして昨年4月、北海道支社長として赴任した。そうした勤務の中で藤原支社長は、営業部長になった時も心掛けたことを幾つか挙げた。それはすなわち、①部下は自分が思っている以上に、上司を見ている②先輩であっても立場なのできちんと注意する③特定の人とだけグループを作らない④過去、自分の教育担当であった先輩も人事評価する――だった。
「こちらの考えが部署ごとに納得してもらえるよう噛み砕いて何度も説明した。営業部長時代のネットワークに今でも助けられている」と藤原支社長は語る。藤原支社長の言葉を学校教育に照らして言うならば、「児童・生徒は教師が思っている以上に、教師を見ている。子供たちが納得できるまで噛み砕いて説明する。えこひいきしない」ということになるのだろう。参加者は同支社長の言葉一つ一つにうなずいた。
平成22年9月に発足し、「教師魂を磨く。実践力の向上を図る.子供に寄り添う教師を育てる」を活動目標に定めた北海道師範塾「教師の道」の取り組みは、年を重ねるごとに深みと広がりを増している。







