スマホで孫と交流
「この夏、母親がスマホを初めて購入したのよ」と、知り合いが苦笑いした。彼女の母親は、80歳をとっくに過ぎているが、まだ車を運転しているというから、なかなか意欲旺盛な人らしい。
小学生でもスマホを持つ時代だ。高齢者が持っても特に驚くことではないだろう。
だが、ほとんどスマホの必要性を感じない筆者はいまだにガラケーだ。スマホを持ってしまうと、用事もないのにいじってしまいそうな気がする。そうなれば、スマホの“奴隷”になったようで嫌なのだ。
電車に乗ると、多くの人がスマホをいじっている。よく見ると、高価そうなスーツを着たサラリーマンでもやっているのはゲーム。その光景は異様だ。だから、「スマホの奴隷」と表現しても大げさではないと思っている。
そんなことから、筆者は「お母さんはスマホで何をするの?」と尋ねた。知人は「孫との交流よ」と、また苦笑いした。彼女の息子はもう社会人だ。
遠く離れた孫と、メールのやりとりしてコミュニケーションを取るのに使うのだったら、親族でも交流が減っている今の時代、喜ばしいことで、苦笑いすることではない、とけげんに思った。知人に確かめると、「そうじゃないのよ」という。
知人がお盆に息子を連れ、母親の住む実家に帰省することになった。それを伝えると、母親は、スマホの購入から操作の仕方まで、孫に教えてもらえば、それ自体が交流になるから、それを楽しみにしていたというのだ。なるほど、それもスマホを使った交流の一つだな、と納得した。
だが、思わぬ副産物があった。知人の母親は、孫に指導を受けたおかげで、メールの送受信ができるようになった。しかし、その相手は、もっぱら彼女が務める羽目になった。仕事で忙しい孫は、おばあちゃんの相手はしていられない。苦笑いの理由がやっと分かった。(森)