同性婚、現実味帯びる「全米合法化」
司法に否定される民意
米国で同性結婚を認める州の数が、19から一気に30を超える見通しとなった。連邦最高裁が、同性婚を禁じた州の規定を違憲とした複数の連邦高裁判決に対する上告を棄却したためだ。住民投票などを通じて示された男女間の伝統的な結婚を支持する民意は、司法によって否定され、同性婚の「全米合法化」が現実味を帯び始めている。(ワシントン・早川俊行)
リベラルな州を中心に同性婚を認める州が年々増える中、同性婚に反対する州は州憲法改正などを通じ、男女間の伝統的な結婚の枠組みを守る「防波堤」を築いていた。ところが、同性婚を禁じたバージニア、ユタ、ウィスコンシン、オクラホマ、インディアナの5州の規定に対し、各地の連邦地裁・高裁が次々に合衆国憲法違反と断定した。
これを不服とする州当局が上告していたが、連邦最高裁が6日に棄却する決定をした。これにより、高裁判決が確定、即日、5州で同性婚が解禁された。民主的手続きを経て設けられた同性婚阻止の防波堤が、少数の連邦判事の判断によって一方的に打ち破られた形だ。
これらの高裁の管轄下にあるコロラド、ワイオミング、カンザス、ウェストバージニア、ノースカロライナ、サウスカロライナの6州でも、同性婚が認められる見通し。さらに、サンフランシスコの連邦高裁は7日、同性婚を禁じるアイダホ、ネバダ両州の規定にも違憲判決を下した。
同性婚を推進するリベラル派法曹団体「全米自由人権協会」(ACLU)のジェームズ・エセックス弁護士は「全米にとって重大な分岐点だ」と述べ、最終目標である全米合法化に向け、劇的な前進を遂げたとの見方を示した。
これに対し、同性婚反対派からは民意を無視する司法に批判が噴出している。オクラホマ州のメアリー・ファリン知事は「結婚を定義する権利を持つのはオクラホマ州民だ。(州民の意志は)選挙で選ばれていない連邦判事によって覆された」と不満を爆発させた。
同州では、2004年の住民投票で同性婚を禁止する州憲法改正に76%という圧倒的多数が賛成していた。ユタ州では66%、ウィスコンシン州では59%、バージニア州では57%が、それぞれ住民投票で同性婚禁止に賛成した。
保守派団体「結婚のための全米組織」のブライアン・ブラウン会長も「法廷が結婚を再定義できるという考え自体が正当でない。結婚が男女間のものであることは、文明の歴史を通じて認められてきた。判事が何と言おうとそれは変わらない」と、司法による同性婚の押し付けを批判した。
このほかの州の同性婚禁止規定も、複数の連邦高裁で争われている。このうち、一部の連邦高裁が州の規定に合憲判決を下す可能性が指摘されており、もしそうなれば、高裁判断が割れることになる。その時、最高裁が上告を受理し、最終判断を下すシナリオが考えられる。
反対派はこのシナリオに望みを託すが、それでも最高裁が今回、上告を棄却し、高裁の違憲判決を確定させた事実は重い。保守系シンクタンク、ヘリテージ財団のライアン・アンダーソン研究員は「最高裁は下級審の間違った判断をそのままにした。これは将来、裁判所が正しい判断をするのを難しくするだろう」との見方を示した。






