【社説】国内景気 知恵絞り悪影響は最小限に


 

 2021年10~12月期の国内総生産(GDP、速報値)は、新型コロナウイルスの感染拡大がいったん落ち着き、実質年率で5・4%増と高い成長率になった。ただ、22年1~3月期は変異株「オミクロン株」の影響で急減速する公算が大きい。行動制限など規制は最小限にとどめ、経済へのマイナス影響をできるだけ少なくするよう知恵を絞ってほしい。

 オミクロン株で腰折れ

 21年10~12月期の成長を牽引(けんいん)したのは個人消費である。4度目の緊急事態宣言が9月末の期限で全面的に解除となり、外食や旅客輸送などのサービス消費が大きく伸びた。自動車生産も供給網の混乱から立ち直り、新車販売が回復した。

 設備投資は前期比0・4%増と伸びはしたが、成長率への寄与度は0・1%にとどまり、輸出も前期比1・0%増、寄与度は0・2%。個人消費が寄与度1・4%で、牽引力の主力というより、これしかなかったというのが実態である。

 同期の実質GDP実額は年率換算で541兆円で、政府が目標とする21年度中のコロナ前水準(19年10~12月期の542兆円)にあと1兆円と迫った。

 問題は感染力の強いオミクロン株の影響である。21年10~12月期に急回復したサービス消費は、オミクロン株流行によるまん延防止等重点措置の発令で持ち直しの動きが腰折れ状態。消費を3兆円弱押し下げ、22年1~3月期の実質GDPは年率0~1%台の低成長に落ち込むことが必至とみられる。

 設備投資や輸出などが伸び、これをカバーできればいいが、主力となる自動車生産は、足元では感染拡大で断続的に操業停止を余儀なくされ、昨年夏以降に落ち込んだ生産の挽回が計画通りに進まない状況である。

 加えて、懸念されるのが原材料費の高騰を受けて食料品や日用品の値上げが相次いでいることで、景気回復の足かせになりかねないことである。

 内閣府は、エネルギー価格の上昇や食料品の値上げで21年の家計負担が前年比2万7000~3万9000円程度増えたと試算。コストプッシュ型の「悪い物価上昇」が家計の購買力低下につながり、消費が一段と冷え込む恐れがある。景気後退と物価高が同時進行する「スタグフレーション」である。これを回避できるかは、今後、賃上げの動向がどうなるかである。

 岸田文雄首相は「成長と分配の好循環」の実現のため、22年春闘で好業績の企業に「3%超」の賃上げを期待するが、経済の先行きが不透明なこともあり、2%に届かないとみる向きも少なくなく、物価上昇に追い付かない可能性がある。

 経済と感染防止の両立を

 米国のGDPは21年4~6月期にコロナ前を超え、ユーロ圏も10~12月期に到達していて日本の遅れが目立つ。22年1~3月期は低成長が必至で、行動制限が長引けばマイナス成長との指摘もあり、日本の回復は4~6月期にずれ込みそうである。

 3回目のワクチン接種を加速させるとともに、行動制限を最小限にとどめ、経済活動と感染防止の両立を図る取り組みを求めたい。