【上昇気流】東京・多磨霊園に眠る旧ソ連の国際スパイ、リヒャルト・ゾルゲの遺骨
東京・多磨霊園に眠る旧ソ連の国際スパイ、リヒャルト・ゾルゲの遺骨を北方領土に埋葬する構想があるという。先月末にラブロフ露外相がそう表明した。
ゾルゲは1930年代、朝日新聞の尾崎秀実と組み、近衛内閣に「南進論」を焚(た)きつけ日本を対米戦争に追いやった。それでスターリンは対独の一正面で「大祖国戦争」を戦え、逆に日本では310万人が犠牲になった。
41年に逮捕され、日本人捕虜との交換を日本側が求めたが、ソ連はゾルゲの存在すら否定し拒否。44年に刑死した。戦後、内縁の日本人妻によって多磨霊園に埋葬された。ソ連はスターリンの死後、一転して英雄にまつり上げた経緯がある。
生まれ故郷は中央アジアにあるアゼルバイジャンの首都バクー。気流子はソ連時代に訪ねた。「ゾルゲ公園」があり、彼の鋭い眼光のモニュメントが印象的だった。紹介された生家は質素で、取り立てて記念物もなく、胡散臭(うさんくさ)かった。
一部新聞によると、多磨霊園の墓所の相続人の維持管理が困難となり、在日ロシア大使館に使用権を譲ることで合意した。どうやらロシアは北方領土をゾルゲの聖地にしたいらしい。ウクライナ同様、ソ連時代の勢力圏は全てロシアの支配下に置く。プーチン大統領の思惑が透けて見える。
死してなおソ連の走狗とはお気の毒。バクーの名称はペルシャ語の「風が吹き抜ける」に由来する。離日するのであれば、生地で千の風になる方が似つかわしい。
(サムネイル画像:Wikipediaより)