【社説】第6波出口戦略 ワクチン追加接種加速が鍵
新型コロナウイルス対策として36都道府県に適用されている「まん延防止等重点措置」が、きょうを期限に山形、沖縄など5県で解除され、大阪など17道府県で3月6日まで延長される。その一方で、水際対策が3月1日から緩和される。
3月から水際対策緩和
専門家は第6波が既にピークを越えたとみているが、重症者や死亡者は遅れて増加することから、なお医療体制の逼迫を警戒すべきとしている。政府はオミクロン株の特性に合った対処を基本姿勢としてきた。しかし、感染者の急増は医療を圧迫し、比較的若い世代への拡大が高齢者への感染に繋がった。
政府や自治体は、感染者がここまで拡大した状況になって、高齢者施設入所者などへワクチンの3回目(追加)接種を急いでいるが、遅きに失した感は否めない。厚生労働省の取り組みの遅れが尾を引いている。高齢者を中心とする3回目接種の加速に全力を挙げるべきだ。
3回目接種については、厚労省の研究班が交互接種を含め効果や副反応についてのデータを公表している。副反応を警戒し接種を躊躇(ちゅうちょ)する人にも安全性や効果が周知されるよう発信の強化も重要だ。
国内でこれだけオミクロン株が広がっているのに、厳しい水際対策を続ける意味はない。海外とのビジネス交流を徒に妨げるだけだ。
3月1日からは、1日当たりの帰国・入国者の上限を3500人から、ビジネス目的の短期滞在者や留学生、技能実習生を含む5000人に増やす。入国後は原則7日間の待機を求めていたのを、検査での陰性確認を条件に3日間に短縮し、ワクチンの3回目接種を終えている人は待機が免除される。経済界からの要望で緩和に踏み切ったが、もっと早くすべきだった。
岸田文雄首相は「第6波の出口に向かって徐々に歩みを始める。次のフェーズへと段階的に準備を進めていく」と述べた。ただ、第6波の出口が見えてくるまで、どれくらいの日数を要するかは分からない。ピークは越えたものの、新規感染者の減少のペースが上がらず、高止まりする恐れもある。
まん延防止等重点措置の抑止効果は限定的だ。その重点措置も5県では解除される。第6波の出口が少しでも早く見えるようにするために「攻め」の感染・重症化予防対策として鍵となるのがワクチンの3回目接種であることは明らかだ。
オミクロン株より感染力が強いとされる亜種「BA.2」への置き換わりも今後起きる可能性があるが、デルタ株、オミクロン株などの変異株にもワクチンの効果は期待できる。
追加接種はようやく1日100万回のペースに乗ってきた。しかし接種を受けた人は人口の12・6%にすぎず、先進国の中で最低レベルだ。
職域、集団接種に支援を
今後、経済社会活動での規制をできるだけ取り除き、回復させていくには、ウィズコロナの切り札であるワクチンの追加接種が重要となる。第6波の出口に向かって、政府は職域接種や集団接種などをさらに強力に支援すべきである。