自然現象としてのコロナ流行の波


ロシア研究家 乾 一宇

下降期に宣言発令の茶番
空気感染対策と免疫力強化を

ロシア研究家 乾 一宇

 ロシアの新型コロナウイルスの状況を追っていて、世界的状況や主要国との比較に及ぶことがある。

 その結果の一つが、新型コロナウイルス新規陽性者数や死亡者数が波状を示すことである。このことは、世界全体の傾向として、また日本を含む多くの国において確認できる(統計サイト「ワールドメーター」)。もちろん、波の大きさ(ピーク・底)や上昇・下降状況などに違いはある。また、長いスパンで見ると、日本の感染者が多くなった第3、4、5波の期間が3~4カ月なのも観測できる。

 さらに、首都など人口密集地で感染が始まり、しばらくして地方に波及していく。感染が減少するのもまず首都などからで、地方の収束はその後である。

ピーク時期がほぼ一致

 ブロガーの藤原かずえ氏は言う。日本で観測された第1波~5波の流行は世界的にも認められ、日本の五つの感染ピークと世界の五つの感染ピークとはほぼ時期が一致する。つまり、コロナの感染現象は地球規模で発生している自然現象であり、時が来れば自然に流行し、時が過ぎれば自然に収束する。世界共通の感染の波が発生する原因は、日本の分科会やマスメディアが科学的根拠もなく警告する「気の緩み」や「人流」ではなく、もちろん「正月休み」「花見」「ゴールデンウイーク」「三連休」「東京五輪」「Go Toキャンペーン」といった日本特有のイベントと関係ないことも明らかである(『Hanada』11月号)。

 ここで指摘したい第一は、自然現象として理解しない日本政府が緊急事態宣言を発令する前後には、すでに新規陽性者数はおおむねピーク期を迎え、下降(収束)期に入っているという、茶番劇が起こっていることである。

 第1回緊急事態宣言2020年4月7日発令・第1波ピーク4月10日、第2回21年1月8日発令・第3波ピーク1月8日、第3回4月25日発令・第4波ピーク5月10日、第4回7月12日発令・8月20日7府県・同27日8道県追加・第5波ピーク8月20日である。

 ウイルスは、宿主に寄生するが、一般に感染力が強ければ毒性は低くなる。逆に、毒性が強まれば、感染力は下がるのが、自然の摂理である。感染力と毒性の両方が強くなれば、宿主たる人間は参ってしまうので、ウイルスは自壊する。

 まず、世界的にも日本の状況でもウイルスが勝っていることを認めることから、コロナ対策を始めないと、場当たり的な対処を繰り返すだけである。

 ワクチンの効用だが、接種の進んでいない国、例えば欧州のスロバキア、セルビア、クロアチア、アジアのインドネシア、バングラデシュなどでも急速に減少しており、ワクチンの予防効果は断定できない。ただ、ワクチンの重症化回避、死亡回避は顕著に認められている。

 第二は、空気感染(経空感染)を認め、それへの対処を国民に普及することである。尾身分科会は、これに触れようともしない。

 8月18日、日本人研究者38人が出した緊急声明は、ウイルスがエアロゾル(空気中の微粒子)となって長期間にわたり空中に浮遊する空気感染対策重視を訴えている。飛沫(ひまつ)よりエアロゾルの方がはるかに感染力が強い。社会的距離も、遮断ビニールやアクリル板も意味がない。換気・通風のみが救ってくれる。感染経路不明の感染者の多くはこの空気感染の可能性がある。

新型コロナウイルス

 東京五輪・パラリンピック後、日本全体、まず東京などから第5波新規陽性者数が激減し始め、その原因や理由が話題になった。尾身会長以下、専門家と称する人々は、不思議なことだと言いつつ、理由は人流とか何とか、いずれも科学的根拠のないことを申される。発想を転換しない限り、人知の及ばないコロナが優勢である。

事実を直視した対策を

 第三として、人は自然免疫を持っている。健康管理(食事、睡眠、日光浴、適度の運動)、ストレス解消、規則正しい生活など自己管理による免疫力強化も重要である。感染防止とともに、感染したときの重症化を防ぐ底力となる。

 新型コロナ禍、事実を直視した対応と自己管理で乗り切りたい。

(いぬい・いちう)