スピード感もち難局に当たれ


政治部長 武田滋樹

 岸田文雄首相(党総裁)率いる自民党は、解散前(276)からの議席減は最小限にとどめ、自公両党で衆院の「絶対安定多数」を占めた。一方、「限定的な閣外協力」まで約束して共産党と選挙協力を進めた立憲民主党は伸びを示せず「共闘」への根強い不信感が明らかになった。

当選確実の候補者名に花を付ける岸田文雄首相(中央右)=31日夜、東京都千代田区

当選確実の候補者名に花を付ける岸田文雄首相(中央右)=31日夜、東京都千代田区

 岸田首相は、菅義偉内閣時代の最悪のシナリオ(50~70議席減)を回避し、国政運営の主導権を確保したことで国民の信任を得たと言える。ただ、まだ発足したばかりだけに、「まずはお手並み拝見」という条件付き信任とみるべきだ。

 その期限は来年夏の参院選だ。あと8カ月しかない。まずは、維新や野党統一候補に流れた批判票について、長期政権の驕(おご)りや緩みはなかったか、反省が必要だ。

 その上に立って、首相自身、テレビ取材に対し「時間がない、急がなければならない」と述べているように、スピード感をもって日本が直面する内外の難局に当たるべきだ。

 その第一は「戦後最大の国難」コロナ禍の収拾と落ち込んだ経済の再生だ。選挙でも最大の争点になった。

 ただ、ウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)はワクチン開発・普及の前後でステージが異なる。開発前は水際対策やクラスター(感染者集団)潰(つぶ)し、ロックダウン(都市封鎖)などで感染拡大を阻止する以外にないが、ワクチン普及後は「ウィズ・コロナ」時代に入る。基礎的な感染対策を取り、経済を如何(いか)に回していくかに焦点が移る。

 幸い、ワクチン接種の拡大に総力を挙げた菅首相の努力もあって、コロナ感染が大きく減少した。この好機を生かして、いっそう効果的な経済対策を早急に打ち出すべきだ。

 また、緊急事態対応の法制、ワクチン・治療薬の独自開発など、これまでの対応で明らかになった不備を克服する取り組みが必要だ。「喉元過ぎれば熱さ忘れる」ことがないよう、早急に着手すべきだ。

 一方、日本の安全保障環境は、中国の覇権主義的な拡大政策や北朝鮮の核・ミサイル開発によって厳しさを増している。尖閣諸島や台湾での有事対応も喫緊の課題として浮上している。

 自衛隊や海上保安庁の活動、装備、法制面の強化を急ぐとともに、日本の外交安全保障の基軸となる日米関係をさらに強固にしていくことが必要だ。これは立憲民主党と共産党との組み合わせでは、到底望めない。早急な首脳会談等を通し、自公政権の強みを見せてもらいたい。