【社説】自公連立継続 緊急課題の克服へ全力を
第49回衆議院総選挙の投開票が行われ、自民、公明両党が過半数を獲得して連立政権は継続することになった。自民も単独で過半数を得たものの議席を減らした。謙虚な姿勢を保ちつつ緊急に対処しなければならない諸課題を克服するため全力を挙げてもらいたい。
改憲政党維新が躍進
今回の選挙は、安倍、菅両政権と発足間もない岸田政権の4年間の評価が問われた。岸田政権が信任されるとともに、両党の議席数が絶対安定多数の261を超えたことで、より協調して国会を運営できよう。
一方、政権交代を訴えた立憲民主党は289ある小選挙区のうち213選挙区で共産、国民民主、社民、れいわ新選組の各党と候補者を一本化して戦ったものの政権交代には遠く及ばなかった。政権欲しさのあまり革命政党である共産と合意した「限定的な閣外協力」という究極の野合が、支援母体の連合や有権者から理解されなかったことがあろう。
注目したいのは、日本維新の会が公示前勢力の3倍増に躍進したことだ。維新は「憲法改正に正面から挑み、時代に適した『今の憲法』へ」と訴える政党である。防衛費の国内総生産(GDP)比1%枠の撤廃や領域内阻止能力の構築検討を公約に掲げた。国会の憲法審査会で改憲論議を盛り上げ他党を刺激するとともに、現実的な安全保障論議を深めてもらいたい。
総選挙後、岸田文雄首相に待っているのは、新型コロナウイルス対策の策定であり、経済再生への取り組みだ。公明は、国産ワクチン・治療薬の迅速な開発、実用化を国家戦略に位置付け、早期に法整備することを主張している。コロナ対策には与党も野党もない。
追加の経済対策も素早く打たねばならない。政府・与党は今月中旬にも対策をまとめ、財源の裏付けとなる2021年度第1次補正は12月上旬まで、22年度予算案は同月下旬までに閣議決定する方向だ。コロナ対策と景気下支えで切れ目のない対応を取ってもらいたい。
外交・安保問題への対処は待ったなしだ。岸田政権のスタートに合わせるように、中国軍が1日から5日までに、戦闘機や爆撃機など延べ150機を台湾の防空識別圏(ADIZ)に侵入させた。台湾有事は日本有事である。北朝鮮は衆院選公示日の19日、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射した。選挙戦の中盤には、中国とロシアの海軍艦艇計10隻が日本列島をほぼ1周するなど、過去にない威圧をしている。
岸田首相は「防衛力の抜本的な強化に取り組む」として「敵基地攻撃能力の保有」をはじめあらゆる選択肢を検討すると語っている。安倍政権時代の国家安全保障戦略を改訂する意向というが、日本と米国、オーストラリア、インドの4カ国連携枠組み「クアッド」や、米国と英国、豪州の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」への関与を含めた総合的な対中戦略の構築も急がれている。
野党は建設的対応を
立憲民主や共産などの野党には、対立ありきの姿勢ではなく、建設的な対応を求めたい。