北海道教委、地域を支える人材の育成が急務

産業教育審議会でAI時代の産業教育の在り方を審議

 人口減少や少子高齢化によって人手不足が深刻な課題になっている。とりわけ広大な面積を有する北海道において過疎化対策は急務。その一方でAI(人工知能)などを含む第4次産業革命といわれる技術革新が進む。そうした中で最先端の技術を有し、地域の成長を支える若い人材として期待されているのが各地で学ぶ職業専門高校の卒業生だ。北海道教育委員会(以下、道教委)はこのほど、「新時代に対応した資質・能力を育成する本道産業教育の在り方」をテーマに審議会をスタートさせた。(札幌支局・湯朝 肇)


小玉道教委教育長「職業専門高の実践的学習を一層充実」

北海道教委、地域を支える人材の育成が急務

2月18日に開かれた第1回の28期北海道産業教育審議会

 「道教委としまして地域や産業界と連携を強め、職業専門高校での実践的学習活動をより一層を充実させ、本道の未来を担う人づくりに力を尽くしていきたい」――。2月18日、札幌市内で開かれた北海道産業教育審議会で小玉俊宏教育長は、あいさつの中でこう語った。同審議会は今回で第28期を迎える。産業界や学界、教育界から集った14人の委員に対し、道教委は「新時代に対応した資質・能力を育成する本道産業教育の在り方について」をテーマに諮問し、約2年間にわたって審議を重ねていくというもの。この日は1回目の審議会となった。

北海道教委、地域を支える人材の育成が急務

北海道教育委員会の小玉俊宏教育長

 小玉教育長は、「新型コロナウイルスの感染拡大がもたらす、あらゆる制約や不透明性の中で、学校教育の現場ではGIGAスクール構想が前倒しされ、オンライン学習が一挙に拡大しました。その一方で新たな社会の実現を目指すSociety5・0においてAIやロボット、IoT、ビッグデータなどの先端技術の活用が加速しています」と述べ、さらに「本道における産業教育におきましても、高度かつ専門的かつ学際的なシェアと知識技術を身に付け、俯瞰(ふかん)的未来志向で社会的な問題を発見し、その問題解決の意欲と行動力を醸成していくことが求められています」と語り、地域を支える人材育成が急務であることを訴える。

 道教委が示した諮問事項は、①探求的な学びを通して、地域創生に貢献できる人材育成に資する産業教育②地域産業界と高校が一体となって社会に開かれた教育課程を推進する産業教育――の2点。この中でのポイントは、「探求的な学び」と「開かれた教育課程」となる。

 文部科学省は新しい学習指導要領で「主体的・対話的で深い学び」を掲げているが、今回の諮問は、それに則(のっと)って「自ら課題を見つけ、問題解決の糸口を探り、調査研究を深め、整理分析して、判断表現する」といういわゆるPDCAサイクルの習得を求めている。

結果より過程を重視した「探究的な学び」を議論

 一方、「開かれた教育課程」は、「人材を育成するには学校教育では限界があり、地域・社会と共に人づくりをしていく」という視点がある。これまで過去の審議会では、「社会変化に対応した産業教育の学科の構成について」(25期)、「グローバル人材の育成に向けた産業教育について」(26期)をテーマに議論がされてきた。前期は「これからの本道産業教育の充実方策について」となっており地域の産業界や大学等との連携、校内の組織マネジメントに関わる課題が話し合われたが、今回の審議会では地域との連携を深めるという視点に重点が置かれ、「地域の課題を見つけ、解決に当たって探求し、問題を解決に向けて地域を支える」といった社会に開かれた産業教育の在り方について議論していく。

 この日の審議会では委員から「探求的な学びについて言えば、学校での授業では答えが必ずある。社会ではこれが唯一の答えというのはない。むしろ、結果に至った過程が大事なことが多い。単に課題を見つけ、探求して表現するだけでなく、エラーが出た場合にどうするか、といった点を含めて審議会で議論していきたい」(福井邦幸・北海道商工会議所連合会政策企画部長)、「道教委の中で唯一の審議会ということなので、産業教育の発展に結び付くよう真剣に取り組んでいきたい」(竹澤聡・北海道科学大学工学部教授)など前向きな意見や感想が出た。同審議会では今後、三つのワーキンググループをつくり、テーマごとに意見を交わす。また、アンケート調査や学校視察を実施した上で来年11月ごろ答申を出す予定。