秘密ネットワーク 米歴代政権に浸透 中国人教授講演で実態明るみ
中枢に「旧友」 情報工作で影響力
中国政府が、トランプ政権誕生までの数十年間、米政府の最高レベルに浸透し、「旧友」と呼ぶ支援者と工作員の秘密ネットワークを通じて米国の政策に影響を与えてきた実態が、中国政府に近い大学教授の講演から明らかになった。
トランプ氏貿易戦争で支障
講演を行ったのは、北京の中国人民大学の国際研究学院副院長の翟東升教授。11月28日に行った演説の動画を中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」に投稿、その後動画は削除された。
バイデン氏にも食指
翟氏はこの動画で、「米国の権力の中枢に仲間がいる。旧友たちだ」と指摘した上で、トランプ氏の貿易戦争によって、秘密ネットワークが利用していた米中間のつながりが失われたと述べた。
この演説を受けて、ラトクリフ国家情報長官は、「中国政府は、米国と世界全体を経済的、軍事的、技術的に支配しようとしている。そこには倫理も道徳もない」と指摘。
国家情報長官管轄下の国家防諜(ぼうちょう)安全保障センターのエバニナ長官は、アスペン研究所のオンライン会合で、中国がすでに米次期政権で役職に就くとみられる当局者らを標的に、「強度の」情報工作、悪意のある影響工作を実施していると指摘した。
翟氏は、「中国はこの30~40年の間、米国の権力内部の組織を使ってきた。ウォール街は1970年代から米国の国内問題、外交に大きな影響力を持ってきた。ここに大きく依存してきた」と、ニューヨークの金融街を通じて、中国が米政界に影響力を行使してきたことを強調した。
ところが、トランプ氏が16年に就任し、「ウォール街は政権をコントロールできなくなった。…互いに敵対するようになったからだ」と、トランプ政権後、米政権への影響力が失われたことを明確にしている。
その一方で翟氏は、「バイデン氏は、伝統的なエリート、政治的エリート、既得権益層であり、ウォール街とは深いつながりがある」と指摘、バイデン氏が政権を取れば、中国はこの関係を復活させるとの見方を示した。
また、バイデン前副大統領の息子ハンター・バイデン氏の中国に絡む不正疑惑についてのトランプ氏の発言について、「バイデン氏の息子が世界に企業を築くのを支援したのは誰が知っているか。そこには、実際にここで、取引があった。だから今、バイデン氏に善意を示すことは中国にとって戦略的、戦術的に価値のあることだと思う」と指摘、中国でのハンター氏の事業を中国共産党が支援したことを示唆した。
中国問題専門家ゴードン・チャン氏は「翟東升氏の発言は、中国エリートがいかに尊大かを示している。臆面もなく公的な場で、バイデン政権になれば中国は再び、米政界の中枢をコントロールできるようになるという考えを表明した」と警戒を呼び掛けている。






