森林に入れば、木の実・草の実で感じる豊かな秋

北海道博物館が親子を対象に「自然観察会」を実施

 広大な森林が広がる自然豊かな北海道。森に入ればさまざまな種類の生物が存在する。とりわけ秋になれば植物は多くの実を結ぶ。そうした植物の実を観察しようと北海道博物館がこのほど親子を対象に自然観察会を実施した。学校の理科の授業では学べない植物の不思議を体験することとなった。(札幌支局・湯朝 肇)


北海道立の野幌森林公園で学校では学べない不思議を体験

 「木の上方を見てください。サルナシ(コクワ)の実がなっていますが、種はどうやって広がっていくと思いますか」――こう問い掛けるのは、北海道博物館の学芸員、水島未記さん。食べるとキウイフルーツのような味のするサルナシは北海道の広葉樹の森ではよく見掛ける木の実だ。

手に持ったアカイタヤのタネを説明する水島学芸員(中央右)

手に持ったアカイタヤのタネを説明する水島学芸員(中央右)

 水島さんがガイド役となった今回の催しは、野幌森林公園内にある自然ふれあい交流館の協力を得て行われた。ちなみに、同公園の敷地面積は2000㌶を優に超え札幌市、江別市、北広島市にまたがる北海道立の自然公園である。大都市近郊にありながらまとまった森林が残されている平地林は日本でも数が少ない。樹木が約110種、野草が400種以上、野鳥は140種以上、昆虫は1300種以上が生息する自然豊かな森である。

 9月26日に実施された観察会のコースは交流館を中心に1㌔圏内の森の中。テーマは「木の実・草の実の大ぼうけんをたどろう」。ここで示された探検とは「植物はどうやって殖えていくのか」ということ。そこで水島さんはタネに注目し、植物は八つのタイプでタネを運び増やしていると提案。実際に、そうなっているかどうかを森に出て調べてみようというのが観察会の趣旨であった。

 そこで提案した八つのタイプとは、①ドングリやクルミなど硬い実を持つ植物②赤やオレンジなど目立つ色をした植物③甘い匂いで、甘い味の実をつける④タネが動物の体にくっついて遠く運んでもらう植物⑤タネに薄い羽根状のものがついている植物⑥小さくて綿のような毛のようなものをタネにつけている植物⑦ほこりのように細かいタネをたくさん作っている植物⑧果実からタネが勢いよく飛び出す植物――という具合だ。

 水島さんいわく。「植物のタネは、親のすぐ近くで芽を出すと、困ることがいろいろあるのです。親の陰になって光を浴びられないことや、土の中の栄養や水を親に取られてしまうことなどだという。タネが生き延びるためには『親から離れること』が大事。そのため、多くの植物が動物や風、水などの力をうまく利用してタネを運ばせていくことになる」

 「なるほど」と思いながら早速、探検に出ると、交流館の近くでガガイモの実を発見。ガガイモといっても芋の仲間ではない。実が熟すと割れて白い綿毛を持ったタネが風に乗って舞い上がり、遠くへ飛ばされていくという。

20人ほど参加、参加者は普段目にしない植物に興味津々

 この日の観察会には20人ほどが参加したが、普段、目にすることのない植物に興味津々。赤い実をつけるマムシグサやラン科の植物のツチアケビ。プロペラのようなものを身につけてタネを遠くに運ぶアカイタヤなど「実際に見るのと植物図鑑で見るのとは大違い」だと参加者の声も弾む。

赤い実をつけるラン科の植物ツチアケビ(左)と鳥には食用でも人間には毒のマムシグサ

赤い実をつけるラン科の植物ツチアケビ(左)と鳥には食用でも人間には毒のマムシグサ

 親子で参加した札幌市立東白石小学校6年生の田中暁人君は「お母さんに勧められて参加しました。新型コロナで部屋にこもることが多かったのですが、大自然に触れることができて良かった。植物の世界にも興味が湧いてきました」とうれしそうに語った。

 「木の実・草の実の大ぼうけん」の企画は一昨年にも実施され、これまで同博物館ではおなじみの企画。それでも水島さんは「前回は2倍以上の参加があったと思います。新型コロナの影響もあるのでしょうが、観察会を行うことができて良かった。学校ではなかなか教えることのできないテーマを実際に森に入って見ると、心に残るのではないでしょうか」と語り、今後も定期的に行っていくという。

 同博物館では冬季に入ると交流館の協力を得ながら、冬の動物たちの足跡観察会を行う予定だ。