2020年再選の行方、最大の障害は不用意な言動
今年の米最大の政治イベントは、11月6日に行われる連邦議会の中間選挙だが、それが終わると、話題は次のテーマに移る。2020年の大統領選だ。
トランプ大統領は再選を目指すのか。もし目指すなら、勝利する可能性はどの程度あるのか。
まず再選を目指すかどうかだが、本人はこれについて公には何も語っていないものの、出馬するとの見方が強い。政権の情報に強いニュースサイト「アクシオス」によると、トランプ氏は大使職に起用しようとしている人物に、選挙戦のために来年には米国に戻したいとの意向を伝えたとされる。
トランプ氏が進めてきた政策も、支持層固めを意識したものが目立つ。例えば、中東に大きな混乱を引き起こすリスクを冒してまでエルサレムをイスラエルの首都と認定したのは、米人口の約4分の1を占め、親イスラエルの傾向が強いキリスト教福音派とユダヤ系大口献金者をつなぎ留めるためだ。その意味では、トランプ氏の外交政策は再選戦略に大きく左右されると言える。
次にトランプ氏が再選を果たすかどうかだが、トランプ氏の醜聞を伝えることが多い米大手メディアの報道は、再選は難しいとの印象を与えるが、必ずしもそうとは言い切れない。
政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によると、23日時点のトランプ氏の支持率は各種世論調査の平均で39・6%と低い水準にある。それでも、どんな醜聞が報じられても支持率が3割を割ることはない。
これは決して離れないコアな支持層が有権者の3割を占めることを意味する。しかも16年大統領選で注目された「隠れトランプ支持者」の存在を加えると、実際の支持率はもっと高いとの見方もある。
「米国民の半数以上はトランプ氏を大統領にふさわしいと思っていないが、トランプ氏が再選を果たす見通しは明るい」。クリントン元大統領の上級顧問を務めたダグ・ソスニク氏は昨年10月、ワシントン・ポスト紙に掲載された評論でこう指摘し、政権奪還を目指す民主党関係者に衝撃を与えた。同氏によると、支持基盤を拡大するのではなくコアな支持層固めに焦点を当てるトランプ氏の方針は「勝利する政治戦略」だという。
ただ、こうした見方はトランプ氏が再選に向け順風であることを意味するわけではない。共和党の牙城だったアラバマ州の上院補選で同党候補が敗れるなど、逆風が吹いている。歴代最低と言われる同氏の不人気により、今年の中間選挙では共和党が議会で過半数を失う可能性がある。
就任1年目に大型減税を盛り込んだ税制改革を実現したほか、シリアとイラクの過激派組織「イスラム国」(IS)をほぼ壊滅させるなど、有権者にアピールできる実績を挙げたトランプ氏。それでも支持率が低迷するのは、波紋を呼ぶツイッター発言など大統領らしからぬ言動がこれを打ち消してしまっているからだ。まさに「自傷行為」と言っていい。
トランプ氏の再選を阻む最大の障害は、トランプ氏自身かもしれない。
(ワシントン・早川俊行)
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