変化した政権運営、混乱の半年から「上り調子」に
トランプ政権の1年は、稚拙な政権運営や混乱が目立った前半と、ホワイトハウスの秩序を徐々に取り戻した後半とで大きく変化した。
ブッシュ元大統領(子)の選挙参謀だったカール・ローブ氏は、政権発足当初に発表したイスラム圏7カ国からの入国禁止令が混乱を招いたことについて、時間をかけて準備し、議会への根回しをしていれば「大きな混乱を避けることができた」とし、「素人劇」だったと見解を語った。
また、大統領補佐官のマイケル・フリン氏が政権発足から1カ月にも満たない段階で辞任。この後も大統領首席補佐官のラインス・プリーバス氏や首席戦略官・上級顧問のスティーブ・バノン氏など政府高官が次々とホワイトハウスを離れ、米メディアから「混乱を極めた」と批判された。
ただ、夏以降はトランプ氏も共和党指導者層と会合を多く持つようになり、政権運営は修正された。ホワイトハウス内での意見対立はあるが、混乱ぶりが目立つことも少なくなった。
ホワイトハウスが徐々に秩序を取り戻し、政権運営が軌道に乗り始めたのは、軍隊式の規律を持ち込んだジョン・ケリー氏が首席補佐官に就いたことが大きい。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は「ケリー氏が政権に安定をもたらしたと評価する声は多い」と指摘し、「(夏以降)ホワイトハウスは以前よりまともな場所になった」と評した。
議会対策も改善され、昨年末にはレーガン政権以来約30年ぶりの抜本的な税制改革の実現までこぎ着けた。
最重要政策に据えていた税制改革が失敗すれば、トランプ氏の政策実現能力を疑問視する声が大きくなる可能性があったことから、「税制改革の実現は今後の議会対策の試金石」(米メディア)として注目されていた。その意味で、共和党を結束できた成果は大きいと言える。
レーガン政権で大統領首席補佐官を務めたケネス・デュバースタイン氏は、政権運営が改善され、昨年中に税制改革を実現させたことについて「トランプ政権は上り調子になっている」と主張。ワシントン・ポスト紙も、失業率が17年ぶりに低い水準の4・1%までなったことを指摘し、「経済面では極めて優れていた」と高く評価した。
一方、政府機関における人事の遅れは相変わらずトランプ政権の大きな課題となっている。CNNテレビによると、1月上旬の段階で政治任用職が上院で承認されたのは301人だった。これはオバマ前大統領の452人やブッシュ元大統領(子)の493人に比べて大幅に少ない数字だ。特に国務省での遅れが目立っており、外交分野でスムーズな政策決定ができていない可能性も指摘されている。
また米メディアによると、ロシア疑惑でモラー特別検察官が数週間以内にトランプ氏の事情聴取をする可能性がある。ホワイトハウスにも捜査が及ぶロシア疑惑の先行きは不透明で、2年目もトランプ政権を悩ますことになりそうだ。
(ワシントン・岩城喜之)





