蜜月時代の日米同盟 首脳間の信頼、今後も鍵に

 トランプ米大統領の就任以来、日米関係は、安倍晋三首相との個人的な信頼関係を土台として「蜜月関係」を築いてきた。
 両首脳は、これまで5回の直接会談と17回の電話会談、両国でそれぞれ1回ずつの「ゴルフ外交」を行うなど、緊密に連絡を取り合ってきた。

 両氏の絆が深まったことを印象付けたのは、昨年2月、初の首脳会談で日米同盟強化を宣言した直後に北朝鮮がミサイルを発射した時だった。フロリダ州パームビーチにあるトランプ氏の別荘での夕食後の会見で、「断じて容認できない」と訴えた安倍首相に、トランプ氏は「米国は偉大な同盟国である日本と100%共にある」と応じ、日米の認識にずれがないことを示した。

 その後も、トランプ氏は、北朝鮮に「最大限の圧力」をかける方針を示し、安倍首相と足並みをそろえて取り組んできた。

 中でも、トランプ氏が9月の国連演説で「13歳の少女が拉致された」と述べ、横田めぐみさんを念頭に拉致問題に言及したことは画期的だった。

 11月の来日時には、トランプ氏は米大統領としては初めて北朝鮮拉致被害者の曽我ひとみさんと面会。また、横田さんの母親の早紀江さんら被害者家族とも会った。北朝鮮の脅威に対して日本と共に向き合う姿勢を改めて示すことになった。

 カーネギー国際平和財団のジェームズ・ショフ上級研究員は「トランプ大統領は安倍首相を信頼しており、発言にもよく耳を傾けるなど非常にいい関係を保っている」と日米関係の現状を評価する。

 トランプ氏は対日貿易赤字の不満を繰り返し述べており、今後、貿易面で日米に摩擦が生じる可能性は否定できないが、これまでのところ日米関係はおおむね良好な関係を維持している。

 トランプ氏は、米国の安保負担を軽減するため、同盟国に対し「応分の負担」を求めており、先月発表した米国家安全保障戦略でも「公平な分担と責任を負うことを期待する」と明記。ワシントン・ポスト紙は、トランプ氏と安倍首相の考えは「日本がより自立した同盟国となり、地域でより大きな役割を果たすことを望んでいる点で一致している」と指摘する。

 ただ、北朝鮮への対応をめぐっては日米両国民の間で温度差も浮かび上がる。

 日本の民間団体「言論NPO」とメリーランド大学が共同で昨年実施した世論調査によると、米国では「北朝鮮を核保有国と認めるべきだ」と答えた人は37・6%で、「認めるべきではない」の36・5%を上回った。一方で、日本では「認めるべきだ」は12・7%で、「認めるべきではない」が70・0%を占めた。

 また、日本や韓国の核武装を認める人が米国では4割にも上った。

 こうした世論を背景に、トランプ氏が、最終的には北朝鮮と大陸間弾道ミサイル(ICBM)を断念させる代わりに核保有を認めるなどの取引を行うのではないかとの疑念も拭えない。

 北朝鮮が狙う同盟の「デカップリング」(切り離し)を避けるため、安倍首相はトランプ氏との個人的な蜜月関係を元に対北で日米の結束を維持していくことが求められる。

(ワシントン・山崎洋介)