【社説】米議会報告 中国の覇権拡大を抑えよ


米議会の超党派諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」が年次報告書を発表し、中国軍が台湾侵攻が可能な初期能力を獲得しつつあると指摘した。

台湾侵攻能力高まる

 報告書は、中国が2020年を「台湾侵攻に必要な能力を開発するための重要な節目」と捉えていたと指摘。中国軍は20年近くにわたって近代化を進め、台湾侵攻初期段階で2万5000人の部隊を台湾に上陸させる能力があるとしている。

 本格的な侵攻作戦は中国にとって依然「ハイリスクな選択」だと指摘する一方、米国の通常戦力だけで中国の指導者に台湾侵攻を思いとどまらせることができるか不確実になっているとしている。このため、多数の対艦ミサイルをインド太平洋地域に配備するなどの対策を講じる必要性も訴えた。

 中国の習近平国家主席は辛亥革命110周年記念大会の演説で、台湾統一について「祖国を完全統一する歴史的任務は必ず実現しなければならず、必ず実現できる」と述べた。日米をはじめとする民主主義陣営は台湾との関係を深め、対中抑止力を高めることが求められよう。

 報告書は、中国が台湾に侵攻すれば、半導体の供給網が混乱すると指摘した。世界の半導体の生産拠点は台湾に集中している。台湾の半導体工場が1年間停止すれば、世界の家電市場の収益が4900億㌦失われるとされる。中国の覇権拡大によって世界経済が損失を被ることがあってはならない。

 台湾の有事は日本有事でもある。今年7月に麻生太郎副総理兼財務相(当時)は、中国が台湾に侵攻した場合、安全保障関連法が定める「存立危機事態」に認定し、限定的な集団的自衛権を行使することもあり得るとの認識を示した。

 存立危機事態は、日本と密接な関係にある他国が攻撃され日本の存立が脅かされる明白な危険がある事態で、集団的自衛権を行使する際の要件の一つだ。日本は米国との連携を強化するとともに、中国の台湾侵攻に備えてさまざまな事態を想定し、十分に対策を練っておく必要がある。将来的には、憲法改正によって集団的自衛権を全面的に行使できるようにしなければならない。

 さらに報告書は、米国が中国との経済的な結び付きを弱めるため、これまでよりも積極的な処置を取るよう提言した。日本にとっても中国とのデカップリング(分断)は大きな課題だが、中国とのつながりによる国家安全保障上のリスクを軽視すべきではない。

日本は核受け入れ検討を

 報告書はまた、中国が核兵器開発に成功した1960年代以降、過去最大となる核戦力の増強と近代化、多様化を進めているとして強い警戒感を示した。中国の核戦力は約10年後に質的に、2030年には量的にも米国と対等になる可能性があると予想している。

 米国の優位性を保つため、バイデン政権は核戦力の近代化を進める必要がある。米国の核の傘に頼る日本は、非核三原則の「持ち込ませず」を見直し、米国の核兵器受け入れなどを検討すべきだ。