【社説】高齢運転者 事故防止策の強化が急務


高齢運転者

 また、高齢運転者による重大事故が発生した。大阪府大阪狭山市のスーパーで、89歳の男の運転する車が店舗に衝突し、3人が死傷する事故が起きた。

 事故を防ぐための取り組みは進んでいるが、さらなる対策が急務だ。

 運転ミスで87歳男性死亡

 大阪府警は、自動車運転処罰法違反容疑で、車を運転していた横山孝容疑者を逮捕した。横山容疑者は妻と2人でスーパーを訪れ、1人で車内で待機していたが、妻が車まで戻って来た際に急発進。店舗前の自動販売機などに接触後、一度バックして再び前進し、店舗に衝突した。

 車にはねられた高齢の3人が病院に搬送され、このうち87歳の男性が死亡した。横山容疑者は「車がじわっと動き始めたので、慌ててしまってアクセルとブレーキを踏み間違えた」と話しているという。運転操作の誤りで重大事故を引き起こしたことは決して許されないが、高齢運転者が同じ高齢者を死に至らせたことは実に痛ましい。

 これまでも高齢運転者による事故は問題となってきた。東京・池袋で2019年4月、当時87歳だった飯塚幸三・旧通産省工業技術院元院長(禁錮5年確定)が、ブレーキと間違えてアクセルを踏み続け、赤信号を無視して猛スピードで横断歩道に突っ込み、母子2人を死亡させて9人に重軽傷を負わせた事故は記憶に新しい。

 警察は運転に不安を覚える人に免許の自主返納を促してきた。池袋の事故が起きた19年に免許を自主返納した人は前年から約18万人増え、過去最多の約60万人に上った。このうち75歳以上が約6割を占めた。昨年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で19年より減ったものの、約55万人に達した。

 それでも75歳以上の返納率は1割にも満たない。公共交通機関が整備されていない過疎地域では高齢者が運転せざるを得ない状況もある。

 09年に324万人だった75歳以上の運転者は、昨年には590万人となった。団塊の世代が75歳以上となる25年には790万人に達するとみられる。高齢運転者の事故防止は喫緊の課題である。

 事故防止策として、これまでは認知症対策が中心だった。免許を更新する75歳以上は現在、認知機能検査が義務付けられている。しかし近年は、認知機能に問題がなくても運転機能が低下して事故を起こすケースが多発している。

 このため昨年6月に成立した改正道路交通法では、運転技能検査が新設され、来年5月に始まる。75歳以上で3年以内に信号無視や逆走、速度超過などの違反があった場合、免許更新時に実車試験を受けなければならず、期限内に合格できなければ免許は失効するというものだ。悲惨な事故の防止につなげる必要がある。

 サポカー普及の後押しを

 改正道交法では、自動ブレーキなどを搭載した安全運転サポート車(サポカー)限定の免許も新設された。

 車が生活に欠かせない高齢者のためにも、自動車会社だけでなく、国や自治体もサポカー普及を後押しすべきだ。