「ドライブ・マイ・カー」に米アカデミー賞
世界が評価する濱口竜介監督、注目を集める気鋭の才能
米アカデミー賞の国際長編映画賞を受賞した「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介監督は、早くからその才能が国内外で注目されてきた。
東京芸大大学院の修了制作で、緊密な会話が織り成す恋愛群像劇「PASSION」(2008年)が内外の映画祭で話題になった。
その後も、東日本大震災のドキュメンタリー(11~13年)や市民ワークショップから生まれた5時間超の「ハッピーアワー」(15年)など、多様なスタイルの作品に取り組む中で自身の演出法を模索してきた。
特に心を砕いたのは、理屈ではない自然な演技を俳優から引き出すこと。そのために編み出したのが、無感情でせりふを読む「本読み」を重ね、本番で初めて感情を乗せることで新鮮な反応を生み出すという方法だ。
試行錯誤の末に生まれた独創性が国際映画祭で確固たる評価を受け始めた。商業デビュー作「寝ても覚めても」(18年)が、カンヌ初出品でコンペティション部門の候補作に。20年のベネチアで銀獅子賞(監督賞)を受賞した黒沢清監督の「スパイの妻」では共同脚本を務め、21年のベルリンで「偶然と想像」が最高賞に次ぐ銀熊賞(審査員大賞)を獲得した。
国際映画祭について、濱口監督は「自分を見つけ、育ててくれた場所。孤独に続けていた作業が無駄じゃないと感じ、『ここに確かにいる』と思わせてもらえた」と感謝を込めて振り返る。
「ドライブ・マイ・カー」の快進撃も、昨年7月のカンヌでの脚本賞受賞から始まった。行き着いたのは、「夢の世界」と感じていた米アカデミー賞のひのき舞台。最高峰にして集大成の場に、ついにその名を刻んだ。