来月から18歳成人、金融教育への取り組み広がる
証券・銀行業界が工夫、高校の「資産形成」授業導入も
証券・銀行業界が高校生らに対する金融経済教育に力を入れている。背景にあるのは、4月の18歳への成人年齢引き下げや高校の家庭科での「資産形成」の授業導入だ。各社は経済の仕組みや資産形成の重要性を知ってほしいと、出張授業や教材作りなど工夫を凝らす。
「『元本保証、リターンが高い』は詐欺だと思って」。マネックス証券の益嶋裕マーケット・アナリストは22日、二松学舎大学付属高校(東京都千代田区)の2年生約200人に訴えた。
この日の出張講座ではラーメン店の開業資金調達を例に、融資や株式発行の仕組みなど説明。投資で得られる利益とリスクについて解説し、悪質な投資詐欺への注意を喚起した。参加した女子生徒(17)は「初めて知ることがたくさんあった」と話した。
成人年齢引き下げで、18歳から親の同意なしに携帯電話やクレジットカードの契約が可能になる一方、知識不足でトラブルに巻き込まれる恐れも指摘される。高校の金融経済教育の授業では、資産形成の視点から投資信託といった金融商品についても教える必要があるが、教師自身に十分な知識がないと適切な指導が難しいとの見方がある。
このため、金融界では自らの知見を生かした取り組みが活発化。三井住友信託銀行の「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」は、高校向け授業用教材を開発。リクエストがあった学校に3月から無償提供しているほか、授業の進め方を提案する動画も作成中だ。
野村ホールディングスは29日に高校の家庭科教員を対象にした勉強会を開催。4月には金融経済教育担当の役員ポストと専門部署を新設する。日本証券業協会と全国銀行協会は昨年12月、金融経済教育推進の覚書を交わした。講師の派遣などで連携し、協力の輪をさらに広げていきたいとしている。