富士山噴火時、渋滞回避のため原則徒歩で避難を


地元の検討委員会が中間報告書を公表、高齢者らは車で

富士山噴火時、渋滞回避のため原則徒歩で避難を

本栖湖(手前)と富士山=2019年4月13日、山梨県富士河口湖町

富士山噴火時、渋滞回避のため原則徒歩で避難を

富士山噴火の避難対象エリア

 富士山噴火時の避難計画について話し合う山梨、静岡両県などの検討委員会は30日、中間報告書を公表した。周辺市街地で渋滞により逃げ遅れが生じる恐れがあるとして、勾配が緩いところでは速度が落ちる溶岩流からの避難は原則徒歩とし、高齢者や障害者らが優先的に車を使う考え方を示した。中間報告を基に、各市町村での地域防災計画作りに生かしてもらう。

 2014~15年に策定した現行計画では、火砕流や大きな噴石が届いたり、3時間以内に溶岩流が到達したりするエリアの住民らに対し、噴火前の避難を促している。しかし、両県などの協議会が21年に改定したハザードマップでは、溶岩の想定噴出量が大きく増えたため、対象となるエリアが拡大。エリア内の人口は従来の約7倍に当たる約11万6000人に上り、検討委は計画の見直しが必要と判断した。

 中間報告によると、6段階の避難対象エリアを設ける。想定火口範囲の「第1次」にいる人、すぐに逃れるのが難しい火砕流や大きな噴石などが届く「第2次」にいる人、溶岩流が3時間以内に到達する「第3次」の高齢者や障害者らは、噴火警戒レベルに応じて事前に避難先へ移動する。

 第3次にいるその他の一般住民に関しては、現行計画では噴火前から逃げることになっているが、噴火後に溶岩流の流れる方向以外の避難場所へ向かうよう見直す。溶岩流の到達時期に応じた「第4次」~「第6次」にいる人も、噴火後に避難する。警戒レベルが発表されても、噴火がいつ起きるのかは分からない。また、火砕流などと比べて、溶岩流が届くまで時間があるため、噴火後の移動で対応する。

 検討委は、登山者・観光客らについて噴火前の帰宅を促す方針だが、交通手段を含めた対応を引き続き探る。降灰対策なども議論した上で、22年度の早い時期に最終的な取りまとめを目指す。

 藤井敏嗣委員長(山梨県富士山科学研究所長)は30日の会合で「関係市町村は最終報告を待つことなく、中間報告の方針に沿って避難体制の再検討を始めてほしい」と述べた。