違法森林伐採 国際的取り組みで森林保護を
アマゾン熱帯雨林で行われる森林伐採の94%は違法なものという報告書が、世界自然保護基金(WWF)などの専門家チームによって発表された。森林火災も深刻であり、アマゾンをはじめ、気候変動をもたらす温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)を大量に吸収している森林の保護を、国際的な取り組みで推進していく必要がある。
過去10年で最悪の広がり
約700万平方㌔のアマゾンの6割を国土に持つブラジルの国立宇宙研究所(INPE)は、人工衛星からの画像分析でアマゾンにおける1カ月当たりの違法伐採面積が昨年比42・5%増加の581平方㌔に上る過去10年で最悪の広がりを4月に記録したと発表した。日本の淡路島(592平方㌔)ほどの森林が1カ月で非合法に失われたことになる。
INPEの発表によると、違法伐採は3月から急増している。一方、欧米やわが国など主要国では輸入木材が不足して高騰しており、今後も伐採はさらに加速する恐れがある。
昨年の新型コロナウイルス感染拡大からテレワークなど在宅による仕事が普及しており、北米では住宅建設が進んでいる。また、ワクチン接種でコロナ後の経済活動の回復が各国で見込まれることから、木材はじめ原材料の需要が高まるだろう。
国連は持続可能な開発目標(SDGs)の中で「森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る」こと、および「気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」ことを掲げており、熱帯雨林の減少はどちらにも直結する問題だ。
しかし、伐採後の土地のほとんどは放牧地へ転換され、飼料となる大豆畑が増えていることが、これまでに国連食糧農業機関(FAO)の調査によって指摘されている。木材と牛肉などの食肉輸出によって経済効果は一石二鳥であることから、違法伐採は増えているのが現状だ。世界の熱帯雨林の中でもアマゾンのCO2吸収能力は最も低下している。
気候変動に関するオンライン首脳会議でブラジルのボルソナロ大統領は、違法森林伐採を2030年までになくすことを公約した。これを果たすには木材や食肉の需給関係にある国々の協力が不可欠だろう。
わが国でも輸入木材が不足して建築資材の価格上昇を招いているが、国内林業を再整備して伐採と植林の環境対策を取りながら国産木材を担い手と共に産業として育成する必要がある。現在、建築用木材の約半分を輸入木材に頼っており、将来に向けて輸入依存率を下げていくべきだ。
温暖化と感染症を防げ
さらに温暖化は深刻な森林火災を世界各地にもたらしており、アマゾンでは昨年パンタナール地方が大きな被害を受けた。希少動物を含む生物多様性の宝庫である熱帯雨林が損なわれれば、深い森にいた生物から新たな感染症が人間社会に広まる恐れもある。
温暖化と感染症の地球規模の問題として国際的に対応しなければならない。