「トランプ減税」が経済牽引 グローバー・ノーキスト氏
全米税制改革協議会議長 グローバー・ノーキスト氏
トランプ米政権に近い有力保守派団体「全米税制改革協議会(ATR)」のグローバー・ノーキスト議長がこのほど、世界日報のインタビューに応じた。ノーキスト氏は、米国の力強い経済は減税と規制緩和を中心としたトランプ大統領の政策によるものだと高く評価。対照的に日本は、消費税の引き上げなど増税を進めているが、「必要なのは経済成長であり、増税は問題解決にならない」と主張した。
(聞き手=編集委員・早川俊行)
日本は増税で少子化悪化
トランプ政権下の米経済をどう見る。

Grover G. Norquist 1985年に全米税制改革協議会を設立し、納税者運動の旗手として活躍。ほとんどの共和党議員にあらゆる増税に反対する「納税者保護誓約書」に署名させるなど、米政界に大きな影響力を持つ。
減税と規制緩和により、非常に力強い。オバマ前政権時代の2016年は、経済成長率が1・6%に落ち込んだが、トランプ政権では3%に上昇した。今は中国との貿易戦争による不透明感から2%程度に戻っているが、これが解決すれば、再び3%以上になるだろう。
トランプ氏の当選直後に株価が急上昇したが、これは経済を機能不全にしかねないオバマ政権の規制が、新政権発足後に実施されることになっていたからだ。これらの規制はトランプ政権下ですべて取り消された。
また、トランプ政権発足後、600万以上の雇用が創出された。多くの人が職探しを諦めたオバマ政権時代と違い、労働参加率も上昇している。労働参加率が上がると、失業率は上がるものだが、トランプ政権下では失業率の低下と労働参加率の上昇が同時に起きている。
2017年の「トランプ減税」の効果は。
極めて大きい。法人税率が35%から21%に引き下げられた。米企業はこれまで、本社をベルギーやカナダ、南アフリカなどに移していたが、その必要がなくなった。
ドイツは米国より法人税率が低かったが、今は米国と競争できなくなった。世界中で法人税率の引き下げが起きている。日本も資本とイノベーションを呼び込むために競争する必要がある。
日本では基本的に「大きな政府」が支持されている。「小さな政府」や減税が経済や国民に好ましいと考える理由は。
米国では税金や規制が少ないところほど、経済成長が進み、雇用が増えている。
スウェーデンも以前は極めて社会主義的で経済も悪かったが、相続税を廃止し、学校選択制を導入するなど、自由化を進めたことで非常に良くなっている。
中国はかつて国民が飢えていたが、私有財産を認めるなど自由化によって成功した。中国は依然、共産主義国で、国家が物事を決めているが、共産主義から離れれば離れるほど経済は成長している。
日本では少子高齢化・人口減少が進む中、社会保障制度を維持するために消費税増税が行われた。
増税は経済成長を妨げる。また、増税は子育ての負担を大きくし、国民はさらに子供を持たなくなる。重い税負担によって夫婦が共働きになれば、子育てがより大変になる。
必要なのは経済成長であり、増税は問題解決にならない。少子化を悪化させるだけだ。
再選の可能性高いトランプ氏
2020年次期米大統領選をどう予想する。
現時点では、トランプ氏が勝つ可能性が高い。投票日までに経済がどうなっているかだが、成長率が3%に戻れば、トランプ氏の勝利だろう。
ただ、民主党候補が優勢という世論調査などが出た場合、トランプ氏の政策が民主党政権で覆されるという予測から経済が減速する可能性がある。
選挙結果を左右するのは、具体的な課題だ。米国では300万人の子供がチャータースクール(公設民営学校)、200万人の子供がホームスクール(在宅教育)で学んでいる。また、1000万人が電子たばこを吸い、1900万人が銃の携帯許可証を持っている。民主党候補はこれらに反対だ。
有権者の40%はトランプ氏に投票する。問題は、これらの個別課題に関心を抱く中間層を惹きつけられるかどうかだ。トランプ氏のことは嫌いでも、個別テーマで共感を得られれば、引き寄せることができる。
結局は大きな政府と小さな政府の対立なのだが、大きな政府という概念よりも、子供をチャータースクールに行かせられなくなる、電子たばこが吸えなくなる、といった具体例を訴えるほうが心に響く。
経済は好調でもトランプ氏の支持率が低迷しているのは不思議だ。
世論調査では、自分が支持する人物がエスタブリッシュメント(既成勢力)から嫌われている場合、誰を支持しているのか言わない人がかなりいる。
また、トランプ氏に満足していない人は多いが、民主党のエリザベス・ウォーレン候補らと比べた時は、異なる数字が出てくる。前回大統領選でも、トランプ氏のことは嫌いだが、ヒラリー・クリントン氏も嫌いだという人がかなりいた。2人とも嫌いだという有権者から、トランプ氏はクリントン氏より多くの票を獲得した。
全米税制改革協議会は、他国の保守派との連携強化に取り組んでいるが、その狙いは。
欧州各国には自由という点で米国より優れていることがある。例えば、米国ではマクドナルドでコーヒーを自分にこぼすと、弁護士がマクドナルドを相手に訴訟を起こすというばかげたことをするが、欧州ではそのようなことはない。
また、スウェーデンのような完全な学校選択制は、米国では認められていない。東欧諸国は低い一律税率のフラット・タックスを採用しているが、これは米国の税制よりも優れている。われわれはお互いに学び合うことができる。