露外交官追放、国際法踏みにじる神経剤襲撃


 英国、米国、欧州連合(EU)各国など27カ国と北大西洋条約機構(NATO)が27日までに、英国で起きた軍用神経剤による元ロシア情報員暗殺未遂事件への対抗措置として露外交官の追放を発表した。

 合わせて150人以上に上る前例のない措置だ。

 欧米が一斉に対抗措置

 ロシアは英国以外にも報復措置を取る方針で、外交戦の展開に“新冷戦”の懸念が浮上しているが、事件は旧ソ連軍の化学兵器の一種である軍用神経剤が英国の公共の場で用いられており重大だ。

 国際法で禁止されている化学兵器が、戦後初めて西欧で使用された衝撃は大きく、無差別殺人を起こす可能性もあった。厳しい対応は理解できる。

 ロシアは軍用神経剤の使用や暗殺未遂を否定しているが、謀略を認めるはずはない。英当局は捜査の結果、関与濃厚と断定した。

 事件は、英国に亡命している元露連邦軍参謀本部情報総局(GRU)大佐と娘が、英国ソールズベリーの商店街のベンチで意識を失っており、駆け付けた警官も病院に運ばれた。防護服を着た捜査員が180人の軍隊の除染支援を受けて捜査に当たった。

 英国のメイ首相は議会で、ロシア関与の可能性が極めて高いと報告し、ロシアに説明を求めた。しかしロシアは応じず、英国は露外交官23人を追放。国際法違反と主権侵害を訴えた英国を欧米諸国も支持し、一斉に対抗措置を取った。

 諸国が他人事(ひとごと)とせずに結束したのは、ロシアの脅威が高まっているためだ。ウクライナ南部クリミア半島併合・ウクライナ侵攻、EUやNATO加盟諸国へのサイバー攻撃、核兵器使用などに言及する軍事恫喝(どうかつ)、「ハイブリッド戦争」と呼ばれる謀略的な複合戦術により旧ソ連の版図に近づこうとする現状変更の試みなどから、対露不信感は極めて高くなっている。

 トランプ米大統領の大統領選中の選挙運動にロシアの関与が疑われているロシアゲートに揺れる中、米国は駐米ロシア大使館の48人、国連職員12人の露外交官を追放し、潜水艦基地やボーイング社の航空機工場が近いシアトルのロシア総領事館を閉鎖すると発表した。また、ガス室でユダヤ人を虐殺したナチスや、ロシア(旧ソ連)の軍事的脅威を受けてきたEUは、事態を重大視して首脳会議で対応を協議。英国のEU離脱交渉の中でも強い連帯を示した。

 一方のロシアは、欧米諸国との対決姿勢を強めている。プーチン大統領は、一般教書演説で米国などのミサイル迎撃システムを突破する超音速ミサイル開発や核兵器重視の戦略を強調した。同大統領再選後も強硬路線が懸念される。

判断誤らぬ冷徹な視線を

 ロシアはソチ冬季五輪の直後にクリミア併合に動いており、6月に開催されるサッカー・ワールドカップのロシア大会も平和時の祭典とは言い難い緊張した環境になってきた。

 北方領土返還をロシアとの平和条約締結時に目指すわが国は、外交判断を誤らない冷徹な視線を持つべきだ。