佐川氏証人喚問 解明の舞台、他に移す時


 学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書を財務省が改竄(かいざん)した問題で、衆参両院の予算委員会は佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問を実施した。佐川氏は改竄について安倍晋三首相や麻生太郎副総理兼財務相の指示を明確に否定するとともに、理財局で対応したことを明らかにした。

 政治家の関与は否定された。国会は真相解明の場を他の委員会に移し財務省改革に向けて全力を挙げるべきだ。政治の舞台を緊迫の度を増す極東外交や憲法改正論議に移す必要がある。

 「政治ショー」化するな

 証人喚問は憲法62条に基づくもので、強制力のない参考人招致と異なり、虚偽の証言をした場合は偽証罪に問われる。そのため、佐川氏の証言は信憑性が高いと言える。

 喚問の中で佐川氏は首相、財務相の指示を明確に否定。菅義偉官房長官や官房副長官らの関与も否定し、「(官邸との)協議や相談はなかった」とはっきりと述べた。

 問題の核心の一つである改竄を誰が指示したかや動機などについては「刑事訴追を受ける恐れがあり、答弁を差し控えたい」と拒否した。これに野党側が反発し、尋問が中断する場面もあった。

 ただ確認したいことは、野党が疑問視してきた官邸の関与が明確に否定されたことだ。佐川氏は土地取引の手続きについても、首相や昭恵夫人の「影響があったとは全く考えていない」とし、首相が昨年2月17日に「私や妻が関係していたとなれば、首相も国会議員も辞める」とした答弁に関しても「前と後で私自身が答弁を変えた意識はない」と影響を否定した。

 一方、佐川氏は財務省内の他部局の関与を否定し「理財局の中で行った」ことを明確にした。従って、次の焦点は理財局内の解明となるが、佐川氏が刑事訴追を念頭に証言を拒否していることから真相究明は大阪地検の捜査に委ねればいい。

 野党側は「不誠実な答弁で疑惑はますます深まった」と強く批判し、昭恵氏らの喚問も求めていく意向だ。しかし、首相は地検の捜査に協力しながら政府として徹底した調査を急がせたいとし、全容解明に全力を尽くしウミを出し切る考えを示している。

 証人喚問要求を連発して「政治ショー」化しマスコミ受けしたいという野党の姿を多くの国民は冷めた目で見ている。支持率が一向に上がらないことがそれを裏付けている。佐川氏の証人喚問実現を受けて与野党に求めたいのは、他の委員会などで真相究明に取り組み、民間人を入れて調査する審議会を発足させ答申を得て財務省改革に着手することだ。

 外交・改憲で活発議論を

 来年度予算がきょう成立し、後半国会に突入する。最大のテーマは南北、米朝、日米首脳会談やそれに続く可能性のある日朝首脳会談にどう臨むかなどの外交課題である。

 同時に、自民党の改憲条文素案が衆参の憲法審査会に提出される。国会を早急に正常化させ、いよいよ本番となる改憲議論を活発化し、発議を目指すことを求めたい。