露軍事演習、欧州側の強い懸念は当然だ


 ロシアとベラルーシの両国軍は、ロシア北西部、ベラルーシ領およびバルト海に面したロシアの飛び地カリーニングラードで大規模な合同軍事演習「ザーパド(西方)2017」を実施した。

 この演習は4年に1回行われるもので、14年3月のロシアによるウクライナ南部クリミア半島併合後は初めてだ。

 実際は10万人参加か

 ロシア国防省の発表によれば、演習に参加した兵士の数は1万2700人。艦船10隻、航空機やヘリコプター70機、戦車など軍用車両680台が投入された。今年の演習テーマはテロ対策で「極めて防衛的なもの」と説明された。

 だが、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の一部は兵器の輸送状況などから兵士の数を10万人以上とする見方を示して警戒を強めた。演習の内容には公表されていない部分も多く、ロシアには透明性の向上が求められる。

 NATOのストルテンベルグ事務総長は「大規模演習は隣国に対する軍事行動を偽装する手段などとして利用されてきた」と述べた。ロシアは08年のグルジア紛争や14年のウクライナ危機の際に周辺地域で大規模演習を実施した。その意味で、欧州側が懸念を強めるのは当然だ。

 ウクライナ危機以降、ロシアと東欧やバルト3国との間で緊張が高まっている。NATOは16年、ロシアへの抑止力としてバルト3国とポーランドに大隊の配備を決定。約4500人が展開している。

 演習をめぐっては、リトアニアのグリバウスカイテ大統領が「バルト諸国への侵攻に利用され得る」と指摘。ポーランドのマチェレウィチ国防相は「演習は防衛的でなく、攻撃的だ。プーチン大統領は欧米を威嚇しようとしている」と述べた。力による現状変更を進めるロシアの姿勢が不信を招いたと言える。

 「ザーパド」に関する批判に対し、ロシア国防省は第三国に向けた演習ではないと強調。東欧諸国への侵攻や占領準備のためだとの外国メディアの指摘には「根拠のない『ロシアの脅威』に基づく作り話だ」と反論していた。

 しかし、グリバウスカイテ大統領は国連総会の演説で「ロシアが行っているのは、近隣諸国に対する攻撃のリハーサルだ。西側を攻撃するための訓練を行っている」と指摘。一方、ロシアのプーチン大統領は国連総会参加を取りやめ、レニングラード州のルシスキー演習場で演習を視察した。

 ウクライナ危機を受け、欧州連合(EU)はロシアに制裁を科している。今年8月には、クリミアにドイツから輸入されたガスタービンが不法に持ち込まれたとして、ロシアの個人3人と企業3社を資産凍結などの制裁対象に加えた。

 クリミア併合撤回せよ

 プーチン氏はクリミア併合によって、ロシアが多くのものを失ったことに目を向ける必要がある。

 ロシアも欧州との関係を改善し、経済協力などを進めたいはずだ。クリミア併合を撤回し、ウクライナ危機の解決を目指すべきではないか。