日米韓首脳会談、緊密な連携で対北包囲網築け


 安倍晋三首相とトランプ米大統領、韓国の文在寅大統領が会談した。核・ミサイル開発を加速させる北朝鮮に対して格段に強い圧力を掛け、国連安全保障理事会で採択された制裁決議の完全履行を中国などに促していくことを申し合わせた。北朝鮮に対する国際包囲網を構築するため、まずは日米韓3カ国が緊密に連携する必要がある。

 「格段に強い圧力」で一致

 トランプ氏は会談冒頭、「致死的兵器を開発する北朝鮮の資金源を絶つ」と述べ、北朝鮮と取引する海外企業・銀行や個人に新たな経済制裁を科すと発表。北朝鮮への圧力を一層高める姿勢を示し、日韓両首脳はこれを支持した。

 北朝鮮の暴挙を止めることができるかどうかは、国際社会の連帯にかかっている。その意味で、日米韓3カ国が北朝鮮に対する圧力の強化で一致したことの意義は大きい。

 トランプ氏は国連総会で行った初の一般討論演説で、北朝鮮に対して米国や同盟国を脅かせば「完全に壊滅する」と警告した。これに反発した北朝鮮は、太平洋上で水爆実験を実施する可能性があると威嚇。金正恩朝鮮労働党委員長は「妄言に対する代価を必ず支払わせる」と強調した。北朝鮮が金委員長の名前で声明を出したのは初めてであり、挑発への警戒を一層強化すべきだ。

 懸念されるのは、韓国が国連児童基金(ユニセフ)などの国際機関を通じて北朝鮮に800万㌦(約9億円)の人道支援を行うと決めたことだ。韓国は2016年1月の4回目の核実験などを理由に人道支援を中止。だが、今年5月に発足した文政権は「人道支援は政治状況と分けて推進する」(趙明均統一相)という立場を表明していた。

 日米韓首脳会談で、安倍首相は文氏に「圧力を損ないかねない行動は避けるべきだ」と述べて慎重な対応を求めた。支援の資金が核・ミサイル開発に流用されないとは限らない。対北包囲網構築の動きに水を差すことにならないか心配だ。

 日本は今回、安倍首相のほか、河野太郎外相が北朝鮮と国交のある160以上の国々に対し「外交関係・経済関係を断つよう強く要求する」と述べるなど、北への国際圧力強化を主導する姿勢を示した。こうした積極性は評価できる。

 さらに日米首脳会談では、日本人拉致被害者と北朝鮮に拘束された米国人の解放へ緊密に連携していくことで合意。トランプ氏は国連演説で、横田めぐみさんを念頭に日本人拉致問題に言及した。

 被害者の家族からは、拉致問題解決への期待の声が上がっている。トランプ氏の発言を被害者全員の帰国につなげなければならない。

 包括的解決を目指せ

 安倍首相は国連演説で、軍事行動を含む「すべての選択肢がテーブルの上にある」とのトランプ政権の立場を「一貫して支持する」と表明した。強固な日米関係をアピールすることは、北朝鮮への牽制(けんせい)となる。

 日本は北朝鮮の核・ミサイル・拉致問題の包括的解決を目指し、米国をはじめとする国際社会との連携を強めるべきだ。