ルーブル暴落、ウクライナ危機を打開せよ


 通貨ルーブルの暴落によってロシアは1998~99年のルーブル危機以来のクライシスに直面し、プーチン政権を脅かしている。

原油価格下落の影響

 「暗黒の月曜日」とも言われる師走の週明け15日にルーブルが急落、翌日には一時、前日比約25%も下落した。年初来、約60%も安い1㌦=80ルーブルまで一気に落ち込み、対ドルで史上再安値を更新した。国家財政が揺らいでいるほか、輸入品を中心にした物価上昇が市民の生活を直撃した。

 ロシア中央銀行はルーブルの急落やインフレ進行の防止のため、主要政策金利を10・5%から17・0%に引き上げたが、ルーブル安に歯止めがかからなかった。ロシアの株価も1割以上の大幅安を記録した。

 インフレ率が10%を超えるのは確実とみられている。ロシア中銀のシベツォフ第1副総裁は「近い将来、状況は(リーマンショックによる金融危機が発生した)2008年に匹敵するものになるだろう」との危惧を表明した。

 一方、米大統領経済諮問委員会(CEA)のファーマン委員長はルーブルの急落について「(ロシアは)非常に深刻な事態に直面しているが、同国が国際ルールに従わなかったため、自ら招いた結果であり、“自業自得”だ」とコメントした。

 ルーブル安の最大要因は原油価格の下落でロシア経済への不安が高まったことだ。連邦歳入の約5割が石油・天然ガスの税収で、石油の収入はガスの約7倍に上る。原油などエネルギー資源輸出依存からなかなか抜け出せないところがロシア経済の弱点である。

 さらに、ウクライナ危機をめぐって欧米が発動した一連の対露制裁も、ロシア経済の成長に大きなブレーキとなっている。

 プーチン大統領はクレムリンで1300人近くの内外記者団を集めた大型会見で、ルーブルの急落に触れて「現在の経済状況は主に外的要因によって引き起こされている。(為替介入を)半歩早くやるべきだったが、中央銀行や政府は適切な措置をとっている」と政府の経済政策に問題はないと強調した。

 だが、「最悪の場合、経済的な困難から脱するには、長くて2年程度が必要かもしれない」と、経済の回復に時間がかかるとの見通しを明らかにした。同時に「経済多角化のためにやるべき計画の多くが実行できなかった」と、改革の遅れも経済低迷の一因であることを認めた。

 経済危機の原因について大統領は、原油などのエネルギー価格の下落のほかに、欧米の経済制裁による影響が25~30%あるとした上で「世界経済の成長は続いており、資源価格が再び上がり、ロシア経済も早期に回復する」との自信を示した。だが資源輸出に依存する経済構造を改革できなければ、根本的な解決にはならない。

国際社会との協調を

 ロシア経済の立て直しには、ウクライナ危機を打開し、欧米に制裁を解除してもらうことも欠かせない。

 国際社会と協調する道を歩むことがロシアの利益にもつながるはずだ。

(12月20付社説)