混迷深める中東情勢
エジプト科学技術大学教授 バセル・ユスリ氏に聞く
トルコ・カタール「政治同盟」
アラブ諸国と対立
中東地域の動きが複雑化している。アラブ諸国も二分され、外からはイラン、トルコが関わり、シリアをめぐっては、ロシアや米国、欧州諸国も関わっている。中東情勢解説者としてエジプトの複数のテレビに出演しているエジプト科学技術大学教授バセル・ユスリ氏に複雑な情勢を解説してもらった。
(聞き手=カイロ・鈴木眞吉)
ムスリム同胞団と連携
中東地域の動きが複雑化している。アラブの春では、ムスリム同胞団が目立ったが、今は地下に潜って影響力を行使しているとされる。現在の中東をめぐる関係各国の動きを解説してもらいたい。

バセル・ユスリ氏 1981年12月6日エジプト、ギザ生まれ。2004年ミスル科学技術大学で主にジャーナリズムを学びマスメディア学士、14年ナーセル軍事大学院で国家安全保障・戦略研究コースおよびメディア・編集コース修了、16年同大学院でマスコミュニケーション修士。
危険なことは、トルコがカタールを支持し、イランとカタールが2013年以来、お互いが良い強い関係を持っていることだ。米国はカタールに2カ所の軍事基地を持つ。米国は、一方で北大西洋条約機構(NATO)加盟国のトルコを支持、欧州連合(EU)への加盟も支持している。
この2カ国はその後、「政治的なイスラム同盟」を出発させたのだ。
ムスリム同胞団を支持するトルコとカタールの2カ国は、エジプトとチュニジア、リビアで2011年に同胞団政権を樹立、アラブ諸国をリードしようとした。しかし、2013年、エジプトの軍部蜂起でモルシ政権が倒れ、エジプトの同胞団はすべてを失った。リビアは状況は違うが、治安が良くない状況が続いている。
チュニジアのカイド・セブシ大統領は、ムスリム同胞団ではない。彼はリベラルな人物だ。
トルコやカタールは、穏健派のイメージが強いが。
トルコとカタールが、アラブ諸国内のテロリスト・グループを支援していることは明らかだ。マスコミもそれを報じている。
例えば、エルドアン氏は以前、「私はシナイ半島を攻撃するためにシリアから戦闘員を連れて来る」と発言した。
リビアの軍指導者は、カタールが、リビア内の全テロリストに金と武器を支援していたと語った。
一方で、「穏健な政治同盟」はエジプトとサウジ、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンを含んでいる。これらの4カ国は、テロとムスリム同胞団を拒否し、多くの討論や交渉を行っている。
ムスリム同胞団とシリアとの関係はどうか? 自由シリア軍はムスリム同胞団が支援しているのではないか。
エジプトのムスリム同胞団は、シリアを分断する目的で自由シリア軍を支援した。
シシ大統領が国防相の時代(ムスリム同胞団幹部のモルシ氏が大統領)に、モルシ大統領はカイロ・スタジアムで行われた集会で、10万人の戦闘員をシリアに送ってシリア政権を打倒しようと呼び掛けたが、シシ国防相がそれを拒否したことがあった。
シリアでは、真の政治的な民主主義を求める普通の運動が起こったのだが、突然、自由シリア軍という軍隊が出現したのだ。今、自由シリア軍のメンバーらは、トルコに逃亡している。トルコはアサド政権と良い関係を持っているが、トルコは彼ら(自由シリア軍戦闘員)を歓迎し、この軍を支えている。トルコはシリア北部のエフレイン地域に侵攻している。
ほとんどの人が、自由シリア軍はアサド政権に対する反対勢力ではなく、彼らは軍人の集まりだと理解するようになった。
さらに、ヒズボラやイラン、イスラム教シーア派武装組織フーシ派からなる「シーア派の政治同盟」もある。
結論的に言うと、トルコとカタールが現在、アラブ諸国と対立し、またシーア派とスンニ派がお互い争い、アラブの内部でテロが起きていることは、結果的にイスラエルを安全にしていることを意味しているのだ。これが、欧米の目的であると思う。





