カブール陥落 タリバンの強権支配許すな


16日、カブールで、通りを見張るタリバンの戦闘員たち(AFP時事)

16日、カブールで、通りを見張るタリバンの戦闘員たち(AFP時事)

 反政府組織タリバンが攻勢を強めていたアフガニスタンで、首都カブールが陥落。ガニ大統領は国外に脱出し、事実上、政権は崩壊した。

 タリバン政権の復活は間違いないが、2001年までのような人権侵害やテロ支援などが起きないよう、監視を続けることが必要だ。

8月末までに米軍撤収

 トランプ前米政権は、カタールでタリバンとの直接交渉を行ってきた。「米史上最長の戦争」(トランプ前大統領)を終わらせ、駐留米兵を撤収させることを目指したもので、昨年2月に和平合意に調印していた。

 米軍の撤収は、この合意を受けたもの。5月とされていた撤収期限は、バイデン政権下で8月いっぱいへと変更された。

 ところが、タリバンは米国との交渉開始後、国内の支配地を拡大し、米国を後ろ盾とするガニ政権を脅かしていた。政権を排除したまま米国との直接交渉を実現したタリバンの士気が高まるのは当然だろう。

 米国は01年、同時多発テロを受けてアフガン戦争を開始した。同時テロを実行した国際テロ組織アルカイダをタリバンがかくまっていたためだ。米国の「テロとの戦い」で、アルカイダは勢力を失い、指導者のウサマ・ビンラディン容疑者は11年にパキスタンで米軍特殊部隊によって殺害された。

 バイデン政権は、アルカイダの弱体化でアフガン戦争の目的は達成されたと撤収の正当性を訴えるが、タリバン政権が復活すれば20年間の努力は水泡に帰す。ブリンケン米国務長官は駐留の継続が「米国の国益に合わない」と主張し、撤収判断を擁護した。

 タリバンへ政権を明け渡すことは、これまで進めてきた民主化プロセスを事実上放棄することでもあり、同盟国からの米国への信頼にも影響を及ぼすのは間違いない。

 民主化を目指して1兆㌦を超える巨額の戦費、資金を投入し、米兵の死者は二千数百人に達している。米共和党のチェイニー下院議員は「今後、同盟国からは米国は信頼できるのか疑念が生じる」と同盟関係への影響に懸念を表明した。

 タリバンは1996年に政権を樹立。イスラム教の教義の厳格な解釈に基づき、女性の就学、就業を禁止して欧米の文化を排斥した。偶像崇拝を禁止した教義に基づいてガンダーラの古代仏教遺跡を爆破し、世界を驚かせた。

 国際社会は、この厳格なイスラム法の施行に基づく人権侵害の復活に懸念を抱いている。さらに、かつてアルカイダをかくまったように、アフガンがテロの温床になる可能性もある。

 タリバン指導部はかつてのような強権支配を否定し、外国との平和的な関係の構築を主張するが、そのごとく受け取ることは難しい。通訳など駐留軍に協力したアフガン人への報復も懸念されている。

 国際社会は監視を怠るな

 タリバンが、どのような体制を構築していくかはまだ見えない。国際社会は、アフガンが再びテロの温床とならないようタリバンへの監視を怠ってはならない。