【韓国紙】ワクチンの“怪談”


新型コロナウイルス

 2009年に新型インフルエンザが大流行した時だ。当時、世界保健機関(WHO)がタミフルを作った多国籍製薬会社と組んで季節性インフルエンザより弱い新型インフルエンザの危険性を誇張したという説が国際社会に広まった。外部専門家委員会の調査でもこの陰謀論は今も五里霧中だ。国内でも10代の間でワクチン接種の臨床試験の対象が老人から中高校生に変更されたとして、接種拒否の主張が広がっている。最初に言い出したのは高校1年生だった。

 新型コロナウイルスのワクチンも“怪談”が絶えない。開発初期からファイザーとモデルナのワクチンが使用したメッセンジャーリボ核酸(mRNA)がDNAに変化を生じさせるとか、ワクチン接種が自閉症を誘発するという誤情報が氾濫した。米国や欧州などの過激な勢力は今もワクチン義務化は政府の市民統制手段だとし、接種拒否運動をしている。最近、各国が青少年の接種を義務化すると、抵抗も激烈になっている。一昨日、ドイツ東部のザクセン州では反ワクチン論者6人が州知事など政府関係者の殺害を謀議したとして警察が家宅捜索する事態にまで至った。

 国内でも下火になっていた怪談が再び広まりつつある。政府が来年2月から防疫パス(接種証明・陰性確認制)を青少年に適用し、事実上接種を義務化したことと無関係ではない。最近、保護者団体によるワクチン接種反対記者会見で、医者と称する人が「ワクチンを培養した後、特殊立体顕微鏡で観察すると、正体不明の微生物確認体を確認した」と主張した。ただでさえ保護者たちの間で青少年のワクチン副反応に憂慮が高まる状況で、この発言はSNSとオンラインコミュニティーによって急速に広まった。ある元老教授も「ワクチンは感染予防とは全く関係がない」と言いながら、無用論に火を付けた。

 防疫当局はワクチンに微生物がいるというのは怪談だと一蹴し、専門家たちも可能性は乏しいと見ている。無用論も科学的根拠があるはずがない。そんな釈明が効果をあげるのは難しそうだ。政府が青少年のワクチン接種方針を覆し、空振りの措置を乱発したため、政策の信頼性に大きな傷を残してから久しい。不信が多いほど陰謀論も盛んになる。政府がワクチンの副反応や異常反応を透明かつ詳細に知らせ、科学的知識に基づいた防疫の新しい枠組みをつくってもらいたい。そうしてこそ怪談は消える。

 (12月17日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。