【韓国紙】教権侵害保険が大盛況


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

丁若鏞 Wikipediaより

 茶山丁若鏞(チョンヤギョン)(茶山は号、朝鮮後期の実学者)は『牧民心書』の興学で、「かつての学校では礼を習い音楽を学んだが、今になっては礼も破壊され音楽も崩れて学校教育は読書にとどまるのみ」だと皮肉った。礼儀と人格を度外視し、成績ばかり重視すれば、教育が崩壊するのは当然だ。200年前の茶山の嘆きは今日も有効だ。栗谷李珥(イイ)(栗谷は号、朝鮮中期の儒学者)の「学校教範」や成均館(朝鮮最高の教育機関)「学則」が強調した師への尊敬も、虎がタバコを吸った時代(はるか昔)の話になった。

 韓国教員団体総連合会が実施した全国の教員の認識に関するアンケート結果によると、「現在、教職生活に満足し、幸福か」に対して「そうだ」との回答は35・7%にとどまった。「生まれ変わったら教職を選ぶか」との質問にも「そうだ」との回答は31・0%にすぎなかった。教員たちの78・0%が士気が低下したと答えた。保護者や生徒の暴行・暴言などで教員団体に相談を要請した教師は最近10年間で2倍に増えた。定年になる前に名誉退職を選ぶ教員も毎年、着実に増えている。

 教育の現場で見るに堪えないほど無残に崩壊した教権を象徴的に示しているのが教権侵害保険だ。この保険は2018年4月頃、ハナ損害保険(当時、ザ・ケイ損害保険)が最初に発売した。教師が教育活動中に暴行、脅迫、名誉棄損、性暴力犯罪や不当な干渉などを受けた時に保険金を与える特約だ。各学校に設置された教権保護委員会の審議を経ていることを立証すれば、300万ウォンを定額支給する。大々的に広報しなかったのに、18年に1512件が販売され、19年には累積加入者が1559人になった。その後、累積加入者数が着実に増加し、20年1月には4451人、21年1月には6082人、今年1月には6833人になった。19年に慰労金を受け取った教師は30人ほどにすぎなかったが、今年1月には累積で250人が慰労金を受け取った。

 教師の権威が一体どれほど崩れて、教権侵害の保険商品が飛ぶように売れているのだろうか。学校での教権の権威失墜は今すぐ皆が膝を突き合わせて解決しなければならない課題となった。

 もうすぐ本格的な入学シーズン(韓国は3月が新学期)になる。教師は教師らしく、学生は学生らしくなければならないとの心構えが入学式場から始まらなければならないようだ。

 (2月22日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

(サムネイル画像:Wikipediaより)