空と海から日本に牙むく北朝鮮
宮塚コリア研究所代表 宮塚 利雄
安倍首相を激しく罵倒
金委員長こそ“戦争気違い”
11月末に韓国に「韓国政府が脱北船員を秘密裏に強制送還した」事件を調べに行ってきた。ところが韓国入りした25日に北朝鮮の金正恩委員長は、文在寅大統領の日韓軍事情報包括保護協定(GSОМIA)覆しに怒って、「9・19南北軍事合意」の破棄を行動で示すべく、黄海の北方限界線(NLL)の最前線部隊で砲射撃訓練を指揮し、「戦争準備と戦闘力強化がすなわち最大の愛国」と前線の部隊を激励した。
そして帰国する28日には、金委員長は国防科学院が行った「超大型放射砲(多連装ロケット砲)」の連発試験発射を視察し、金委員長は「大きな満足の意を表した」と朝鮮中央通信は翌29日に報じた。わずか4日間の韓国滞在中に、北朝鮮は2度も射撃訓練をしたことになる。
お得意の「弱者の恫喝」
筆者は以前、日本の某テレビ局に1週間に1度、番組出演のために行っていたことがある。ある時、北朝鮮の朝鮮中央テレビの翻訳を担当している韓国人留学生から、「先生、トウジョウヒデキって誰ですか」と聞かれた。何でも放送の中で「安倍首相はトウジョウヒデキと同じくチョンジェンミチグァンイ(戦争気違い)」と言っているのですが、「トウジョウヒデキが誰のことか分からないのでお聞きしました」とのこと。北朝鮮はよく「戦争気違い」をアメリカに向けても使うが、「戦争気違いは安倍首相ではなく、お前さんではないのか」と言いたくなるのだが。
さて、この「戦争気違い」の金委員長は、7日に北朝鮮外務省の宋日昊大使を通じ「超大型ロケット砲をもって大騒ぎを起こしている安倍を糾弾」という談話を発表した。
曰(いわ)く「ばかは死ぬ時までばかであり、生まれつきのならず者は永遠に改変されないといわれる。今、われわれの超大型砲発射に対して日本領土に核爆弾でも落ちたかのように騒ぎ立てている日本首相の安倍がまさに、人間としての値打ちもないそのような白痴、ならず者である。…ロケット砲とミサイルも区別できない分際で、軍事大国化を夢見ている天下にたとえない無知な男、その貧困な頭で『挑発』『暴挙』『拉致』や『圧迫』という粗悪な単語しか言えない低能児がまさに安倍である。このように低劣で無知非道な背徳者が首相のポストに就いているのだから、日本という国が世人から『政治小国』『沈む島国』『前途がない孤独な国』と指弾されているのである」と。
強面(こわもて)の宋大使の言うことであるから、さぞかし凄(すご)みのある内容かと思ったが、北朝鮮が得意とする「弱者の恫喝(どうかつ)」であり、「犬の遠吠(とおぼ)え」にしか見えない。ただ、「一時、島国の上空を飛び越える飛翔体の軌跡や轟音(ごうおん)だけを聞いても、びっくり仰天していた小人らが、その時の不安と恐怖がそんなにも懐かしくて、わが朝鮮にあくまでも挑戦しようとするなら、われわれは日本という孤独な島を眼中に置かず、われわれが成すべきことをするようになるであろう」と、最後に脅し文句を付け加えることを忘れなかったが、白々しいだけである。
さらに、北朝鮮は30日に外務省日本担当副局長の談話で、28日に試射した「超大型放射砲(多連装ロケット弾)」を、弾道ミサイルと断言した安倍首相を名指しで非難した。また、「安倍は本物の弾道ミサイルが何なのか遠からず、極めて間近で見ることもあり得る」と警告し、安倍首相が無条件の日朝首脳会談を呼び掛けていることを念頭に「最初から永遠に向き合わないのが上策との考えが日々固まっていく」と突き放したが、これは拉致問題が議題になることを認知しての発言である。
自らぶつかり補償要求
それにしても、韓国の茶坊主大統領、商売に長(た)けたアメリカの大統領、狡猾(こうかつ)な中国の主席、それにローマ教皇にまで「拉致問題の解決」を哀願してきたが、一向に解決する兆しがないのはいったいどうしたことか。10月に日本海の大和堆付近で北朝鮮漁船が日本の水産庁の船に自らぶつかって来ながら、北朝鮮は補償を要求してきた。ずうずうしいにも程がある。
(みやつか・としお)