中国のウイグル強制収容所、実数は500万人から700万人

「世界ウイグル会議」元議長 ラビア・カーディル氏に聞く

 ペンス米副大統領は10月4日の演説で「新疆ウイグル自治区では、共産党が100万人ほどのイスラム教ウイグル人を収容所に入れ、昼夜を問わず洗脳している」と批判した。「完全な虚偽」と強弁してきた中国政府は「テロ対策」などとして最近、その存在を認めた。ウイグル人への人権弾圧問題を、亡命ウイグル人でつくる「世界ウイグル会議」元議長のラビア・カーディル氏に聞いた。
(聞き手=池永達夫、石井孝秀)

共産党政権の狙いは民族消滅
55歳以下は臓器売買の対象

収容所に入れられているウイグル人の数は、どの程度なのか。

ラビア・カーディル氏

 ラビア・カーディル氏 1947年1月27日、新疆生まれ。新疆ウイグル自治区で実業家として成功し、中国人民政治協商会議委員を務める。民族問題に関する政権批判で政権から疎まれ、1999年に国家機密漏洩罪で投獄。2005年、米国へ亡命。世界ウイグル会議の議長として、ウイグル人の人権擁護を訴え続け、「ウイグルの母」と慕われている。新疆にいる息子は獄中にいる。

 海外メディアは、100万から300万人のウイグル人が強制収用所にいると報じているが、実際は500万人から700万人に上る。ウルムチには、100近い強制収容所が存在する。今は強制収容所の中に入れ切れなくなっている。だから、どんどん有罪判決を出し、一部を内陸部の刑務所に移している。

 特に30代、40代の男性250万を内陸部の刑務所に輸送している。内陸部の刑務所に入れられたら、内臓売買の犠牲者になるとわれわれは危惧している。臓器摘出の対象になるのは55歳以下の健康な人たちだ。

 習近平政権は世界の目をもろともせず、強制収容所にウイグル人を入れているだけでなく虐殺を始めている。

内陸とは。

 ウイグル人にとって内陸というと、ウイグル東部のハミから北京までを指す。

 判決では、5種類の罪を擦(なす)り付けている。一つでも該当すれば、7年とか多いと無期懲役という判決内容だ。

 その5種類とは、①外国渡航履歴がある人②外国メディアを見聞きした人③お祈りした人、もしくは自分たちの子供にお祈りの仕方を教えた人④自分の民族をたたえる歌を歌った人、および演奏者⑤ウイグル文化や歴史を研究し、それに関する出版物を発表した人――となっている。最終的に死刑になる人もいる。

 今回、訪日した在米ウイグル人ノリ・ティープ氏のお兄さんが最近、死刑判決を言い渡されている。新疆大学学長をやっていた知識人だ。彼は、ウイグル文化の本を書いただけだ。それも出版時、共産党の指導を受けつつ、そのルールを守り、われわれとしては不本意なところもあったが、共産党は喜んだぐらいだったから何も罪はないはずだ。

 中国共産党政権とも仲良く暮らさないといけないと思っている人たちでさえ、死刑を言い渡されている。

収容所での生活はどういうものなのか。

 収容所から脱出したウイグル人から生の声を聴いているが、いっそ早く殺してくれと願ってばかりいる人も少なくない。毎日のように、いろんな方法で拷問されているからだ。

 食事も満足に取れないし、定員7人の部屋に37人以上の人たちが一緒に押し込められる。だから、みんなが横になることはできなくて、順番に立って寝るという繰り返しになっている。さらに8時間以上の政治学習を強いられる。勉強の中身は、生まれて何を考えたか、どういう信条を持っているか。それを書かされる。その紙を回収して、それを見て罪を決める。

 こういう考え方を持っているから、7年、10年といった具合だ。何も書かなかった場合、自分の問題を正直に白状しないということで、それも7年程度の判決になる。

収容所に入った後、家に帰れる人はいないのか。

 ほとんど出て来る人はいない。それでも出る人は、10日以内に死んでしまうような衰弱しきった人たちだ。絶望的な重い病気の時だけは、帰されている。

 一番恐ろしいのは子供たちの問題だ。父母が収容所に連れて行かれたら、生まれたばかりの赤ん坊や幼児が、そのまま家に取り残されてしまう。そうした子供たちを、まとめて収容する子供たち専用の教育キャンプまでつくっている。

収容された子供の数は。

 およそ50万人だ。

ウイグル人の家そのものが奪われることはないのか。

 中国人に乗っ取られている。どういうやり方かというと、若い婦人の夫を強制収容所に連れて行き、残された夫人たちに内陸部から連れて来た漢人男性と結婚させる。拒否するウイグル人女性は、強制収容所に連れて行かれる。数十人や100人近い単位で集団結婚させられる。その証拠ビデオもある。

これからの展望は。

 虐殺をやっている共産党政権と一緒に国を維持していくことはできない。ウイグル人は中国人と一つになることはない。なぜなら、彼らは地球から私たちを抹殺しようとしている。

 もし彼らが、こうしたひどいことをしなかったら、まだ考える余地はあっただろう。彼らがやっていることは、民族の消滅だ。家族を亡くしたウイグル人たちは、絶対、容赦しない。中国政府を絶対、信じない。

 私の目の前の最重要課題は、強制収容所を閉鎖させることだ。ウイグルに対する虐殺を止めることだ。すでに人権レベルの問題を超えている。

 私たちが中国政府に何か悪いことをしたのですか。なぜ、何の理由もなく殺すのですか。第2次世界大戦の時、ドイツはユダヤ人虐殺をやった。中国はウイグル人をそれ以上に殺している。中国共産党がやっていることは、ナチス・ドイツの独裁者ヒトラー以上の大虐殺であり、人類に対する罪だ。

米共和党のルビオ上院議員らはこの問題で、「空前の弾圧」と非難し、対中経済制裁など強い対抗措置をトランプ大統領に求めているが、日本には何を期待するのか。また、どういった活動計画があるのか。

 アジアの民主主義国家として先頭を走る日本には、もっと実態を知って欲しい。そのためにも、現地への調査団派遣などで協力を求めたい。

 活動計画としては、国連の人権に関する規約(国連人権規約)に署名している中国は規約違反を犯していることを鮮明にする。また、人権を保護し、あらゆる差別を認めないオリンピック憲章に違反するため、2022年北京開催の冬季オリンピック見直しをIOC(国際オリンピック委員会)に求める。

 さらに、人権侵害に関わった外国人政府高官に適用される米グローバル・マグニツキー法により、陳全国・新疆ウイグル自治区党委書記への制裁を求める。