中東和平、オマーンが仲介か
イスラエル首相が異例の訪問
近隣アラブ諸国との関係改善を目指しているイスラエルのネタニヤフ首相が先月25日、オマーンを訪問し、カブース国王と会談した。カブース国王の招待によるもの。数日前には、パレスチナ自治政府のアッバス議長もオマーンを訪れ、カブース国王と会談。オマーンを仲介にイスラエルとパレスチナの和平へ向けた間接的対話が開始された。(エルサレム・森田貴裕)
イランは「分断画策」と警戒
ネタニヤフ氏とカブース国王は、イスラエルとパレスチナによる中東和平交渉の推進や、中東地域の平和と安定などについて意見交換した。訪問には対外情報機関モサドのコーヘン長官ら国防関係者、外務省や首相府の高官らが同行した。
現在イスラエルと正式な外交関係があるアラブ諸国は、エジプトとヨルダンの2カ国のみで、イスラエルの首相が国交のないアラブの国を訪れるのは極めて異例だ。
イランを脅威と見なすイスラエルは、トランプ米大統領が「世紀のディール」と呼ぶ中東和平案により、サウジアラビアなどイランと対立しているアラブ諸国との連携強化を図っている。ネタニヤフ氏は、近隣アラブ諸国との関係改善によってパレスチナとの和平が実現可能になると強調している。
イスラエルと敵対するイランは、「イスラエルはイスラム諸国を分断しようとしている」と、訪問を批判。オマーンのイスラエル接近を警戒している。
ネタニヤフ首相のオマーン訪問後の26日夜から27日朝にかけ、ガザから約40発のロケット弾が発射された。イスラエル軍は対空防衛システム・アイアンドームで17発を撃墜した。
ガザ地区の内外で発生する全てのテロ行為に対してイスラム根本主義組織ハマスに全責任があるとしているイスラエル軍は、報復としてガザ地区のハマス軍事施設など87カ所を標的に大規模空爆を実施した。8月に2日間で150発のロケット弾が発射されて以来の激しい応酬となった。
スデロッドやガザ周辺の幾つかの町では、イスラエル住民6人がシェルターへ避難する際に軽傷を負ったほか、7人がショック症状で手当てを受けた。
パレスチナのイスラム聖戦は27日朝、声明を出し、「イスラエルが金曜日のデモのパレスチナ人抗議者4人を殺害したことの報復としてロケット弾を発射した」と述べ、イスラエルへのロケット弾攻撃を認めた。また、「イスラエルが暴力と攻撃を続けるならば、われわれは報復を強化する」と述べ、ロケット弾攻撃の激化を警告。「爆撃には爆撃で、血には血で酬(むく)い、あらゆるイスラエルの攻撃に対して報復するだろう」と述べた。
イスラエル軍がロケット弾攻撃の報復として、ガザ地区のイスラム聖戦軍事拠点8カ所を空爆した後、イスラム聖戦がエジプトの仲介でイスラエルとの停戦合意を発表し、攻撃の応酬を終えた。
イスラエル軍報道官のコンリカス中佐は27日、記者団に対し、「イスラム聖戦の背後で、シリア政府とシリアに拠点を置くイランのイスラム革命防衛隊の特殊部隊、クッズ部隊がロケット弾発射の命令を出している」と非難。加えて「イスラエルの報復は、地理的に制限されていない」と述べ、シリアにあるイランの軍事拠点を攻撃する可能性を示唆した。
イスラエル紙イディオト・アハロノトで、イスラエルの軍事ジャーナリストであるロン・ベン・イシャイ氏は、イランはネタニヤフ氏のオマーン訪問を懸念しており、イスラエルとパレスチナの紛争終結を望んでおらず、その動きを混乱させるためにイスラム聖戦を使い大規模なロケット弾発射を命じたと分析している。