“ろうそくデモ”後の民主主義、大統領府への権力集中は不変


韓国紙セゲイルボ

 現職大統領の弾劾まで導き出した“ろうそくデモ”が始まった日が2年前のこの時期だ。大統領府と与党のろうそくデモ賛嘆は相変わらず続いている。文在寅大統領は特別のメッセージこそ出していないが、最近フランスを訪問した席で、「21世紀、ろうそくデモ革命は最も美しく平和的な方法で韓国の民主主義を守った」と語った。ところが、2年前光化門広場を埋め尽くした市民はその日を追憶するには気だるい日常に耐えている。政府が約束した雇用は増えず、商店街に客の足はまばらだ。不動産価格が天井知らずに上がったのが最近なのに、今は株価が底を打っている。

文在寅大統領

10月30日、韓国西部群山で演説する文在寅大統領(EPA時事)

 ろうそくデモを主導した進歩団体が2周年集会で、「非正規職、最低賃金、不動産など民生問題で準備不足の対策を発表し混乱を拡大した」と批判するほどだ。彼らは大統領が期待に反して右傾化したと声を高めるが、文大統領が支払わなければならない“ろうそくデモの代価”は別にある。

 ろうそくデモが好評だったのは平和的に行われ、憲政手続きに則(のっと)った政権交代につながったからだ。それでも“広場の政治”は非常時の話であって、日常的な民主主義は政府と国会、政党の役割だ。2年前には、帝王的大統領制が政治改革の優先課題だった。大統領、大統領府に過度に力が集中して、政府と国会、政党システムが崩れたことへの反省からだ。就任初期に大統領府が脱権威主義の姿を示していた時には、歴代政府とは違うのだと思ったが、すぐにその期待は壊れてしまった。

 政府はもちろん国会、国民も大統領府だけを見ている。南北高官級協議の記者団から脱北者出身の記者を出発直前に除外した趙明均統一部長官は「私の責任」だと言ったが、大統領府の判断だと信じる人々がはるかに多い。マスコミ報道のような自由主義の核心価値や北朝鮮の金正恩体制に対する(大統領府の)認識を端的に示す事例だと考えている。

 最近、学術フォーラムで会った米国の韓半島専門シンクタンクの関係者は、「(韓国)政府のパートナーよりは、大統領府の補佐官たちの動向を一層注視している」と言った。自由韓国党の金聖泰院内代表が言うように、文大統領が“皇帝陛下レベルの対民統治”を行っているとまでは言わないが、そうした主張が出てくる程、大統領府への権力集中はひどく、協議とコンセンサスによる統治の可能性は希薄になっている。平壌共同宣言と板門店宣言の軍事分野の履行合意書批准を強行した波紋はまだ収まっていない。

 今は、政府がろうそくデモを賛嘆する時でなく、ろうそくデモ以後の民主主義が良くなったかどうかを自問自答すべき時だ。文大統領が支払わなければならないろうそくデモの明細書は、デモ隊が差し出す積弊清算リストでなく、市民が守った民主主義の制度化でなければならない。

(黄政美(ファンジョンミ)編集者、10月30日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。