法的保護求める保守派 自由守る兵士の自由守れ
オバマの対宗教戦争・第1部
神を見失うアメリカ(12)
「自由を守るために命を危険にさらす兵士たちの権利を守るために、我々はあらゆることをしなければならない」
7月上旬、オバマ政権下で脅かされる米兵の信教の自由を守るために、14の保守派団体が連合体を結成したことを受け、ワシントンの連邦議会前で記者会見した。退役陸軍中将のジェリー・ボイキン家庭調査協議会副会長は、政府方針に反対できない現場兵士たちに代わり、保守派が結束して自由の擁護者である兵士の自由を擁護しなければならないと訴えた。
保守派の強い要請を受け、共和党のジョン・フレミング下院議員は2014会計年度(13年10月~14年9月)国防権限法案に、兵士たちの良心や信仰に基づく行動や言論を保護する条項を加える修正案を提出。前年度の国防権限法にも兵士の信念を保護する条項が入ったが、保護の対象を信念だけでなく具体的な行動にも拡大する内容だ。
フレミング氏の修正案が盛り込まれた国防権限法案は、超党派の賛成を得て下院を通過。与党民主党が多数派を占める上院の軍事委員会でも、同様の文言を入れる修正案が可決された。だが、これに猛反発しているのが、他ならぬホワイトハウスだ。
ホワイトハウスは声明で、兵士の良心保護を強化する条項に「強く反対する」と断言。法案がこのまま両院で可決された場合、「大統領の上級顧問たちは拒否権行使を進言する」と警告し、議会に同条項を削除するよう要求した。
ホワイトハウスは反対の理由を「問題のある言論や行動に対処する指揮官の権限を制限すれば、部隊の秩序や士気に悪影響を及ぼす」と説明したが、これは表向きの理由だ。米軍から宗教的要素を排除し、また、同性愛への否定的意見を抑え込みたいリベラル派の意向を汲んだものであることは間違いない。
一方、最高司令官である大統領の方針に従うことが求められる米軍幹部は、これまで不満を表明するのを控えてきたが、沈黙を破る人物が現れた。沿岸警備隊のウィリアム・リー少将だ。沿岸警備隊は国土安全保障省の所属だが、陸海空軍・海兵隊に次ぐ第5の軍隊として認知されている。
「心のありのままをお話ししたい」。5月第1月曜日の「全国祈祷の日」にワシントンで開催された行事でスピーチしたリー氏は、事前に用意した原稿を読まず、オバマ政権下で信教の自由がいかに圧迫されているかを率直に語った。
「信仰を表現する憲法上の権利に関し、我々は狭い狭い箱の中に押し込められるような束縛を感じている」。リー氏はオバマ政権の法務担当者から信仰を表に出さないようさまざまな制約を押し付けられている実態を明らかにした。
また、銃で頭を撃ち、自殺を図ろうとした20代兵士と面会したエピソードを紹介。リー氏は「この男に聖書を渡したい」と思ったが、そのような行為は規則違反であり、処分を受ける可能性があった。それでも、良心に従って行動した。
「法務担当者は私にそのようなことをしたら一線を越えることになると言う。だが、そんな一線、私は喜んで何度でも越える。希望があることを若者に伝えるために、憲法で保障された権利から逃げることはしない」
だが、信仰を持つ兵士たちを取り巻く環境は、嵐が襲うように今後一段と厳しくなることが予想されるという。リー氏は切実にこう訴えた。
「我々が嵐に耐えられるように祈ってほしい。これはキリスト教徒だけの問題ではない。米国の問題だ」
(ワシントン・早川俊行)






