占拠デモ、台湾政局に影響

香港誌「前哨」編集長 劉達文氏に聞く(下)

400――香港の占拠デモは11月29日に投開票される台湾の統一地方選挙に影響を与えるか。台湾政局への影響をどう見るか。

 鄧小平が提唱した一国二制度の本当の狙いは台湾にあり、香港政局は当然、台湾に大きく影響する。台湾では中国が打診する一国二制度に対して支持するのは約1割で大多数は受け入れていない。香港の占拠デモが長期化することで台湾与党・国民党にはかなり不利に働く。台湾では「選挙で国民党を選べば台湾は香港になる」と国民党を揶揄(やゆ)するスローガンまで出ている。

 ――中国共産党規律検査委員会は双規処分で取り調べを続けている周永康・前政治局常務委員について、先月23日まで行われた中国共産党の重要会議「第18期中央委員会第4回総会(4中総会)」で最終処分の言及がなかった。処分はどうなるか。

 周永康氏は家族や親族に罪が及ばないことを条件に罪状を認める最終交渉に入り、党籍剥奪や懲役刑を受け入れる最終段階に入った。最終処分に関する言及がなかったのは、党規律検査委員会と周氏との間で罪状認否をめぐる交渉がこの段階では完全に煮詰まっていなかったためだ。周氏は薄煕来元重慶市党委書記(元政治局員)のように徹底して裁判で対抗し続けるスタンスとは違い、家族や親族に罪が及ばないことを交換条件に罪を認める態度に変わってきている。

 ――習近平政権としては取り調べが最終段階に来ている周永康氏に対して最終的にどう処断する見通しか。

 習近平政権としては周氏が習近平政権に対して完全屈服する形で穏便な決着となれば、腐敗の温床だった江沢民元国家主席を中心とする上海閥の政治力を削(そ)ぎ、権力基盤にプラスとなると判断している。

 江沢民元国家主席をトップとする上海閥にも政治的に大きな影響を与える結果になり、老いた大トラ(江沢民)自身への捜査は無理でも、その家族や傘下の取り締まりや処分は着々と進めることができると習近平政権は判断している。江沢民氏の長男・江綿恒上海科技大学長は最近は取り締まりを恐れ、企業経営者の立場を退いたり、利権を手放し始めている。江綿恒氏は投資コンサルタント会社である上海聯和投資有限公司の代表を務めてハイテク、自動車、航空業界に顧問として入り、巨額の利権を得てきたが、今年に入って顧問を辞め、一線を退いている。

 ――10月末、中国の改革派政治思想誌「炎黄春秋」の社長に胡耀邦・元中国共産党総書記の長男・胡徳平氏が就任した。その一方で昨年1月、メディアを管轄する広東省共産党委員会宣伝部が新年号を事前検閲した改革派の中国週刊紙「南方週末」は宣伝部の圧力を受け続けているが、中国の今後の言論統制についてどう見るか。

 悲観的には見ていない。「炎黄春秋」の社長に胡徳平氏が就任したのは党内改革派と保守派の権力闘争の中で決まったことだが習近平国家主席の直接指示ではない。胡徳平氏は全国政治協商会議(政協)常務委員でもあり、政治力は改革派として党内でもある程度あるので「炎黄春秋」は党内左派の圧力があっても継続していると見ている。広東省の伝統ある「南方週末」は党中央に大きなトラブルを起こし続けているわけではなく、党内でも社論を応援する勢力もあり、存続するだろう。

(聞き手・深川耕治)